勉強
「昔は学校、と呼んでおりましたな。つまり、勉強をする場所です。どうです? 茜さんは、今まで何かを学びましたか?」
「勿論よ!」
茜の頬が紅潮した。
「仁義の切り方や、舐められないようなガンの飛ばし方とか、二輪車の乗り方とか……。先輩に教えてもらったわ!」
「やれやれ……」
光右衛門は嘆息した。
「やはり、そうでしたか。案じておった通りです。人間として必要な学問は、この番長星では一切、学んではいないのですな。『女大学』すら知らないのでしょう? あれは一人前の女性になる必読の書ですぞ!」
「だって、そんなの知らなくても、構わないもん!」
茜は、かなり気分を害している様子だった。腕を組み、眉を寄せて怒りの表情を浮かべている。
そんな茜を見て、世之介は光右衛門の『女大学』はともかく、番長星の人間が、もっとマトモな状態になるべきだと思っていた。少なくとも、喧嘩だけが価値の総てであるという現状は、断固として正さなければならないと感じていた。
茜もきっと判ってくれる……。世之介は茜のためにも、銀河幕府にこの星の現状を通報しなければと思っていた。
「それで、どうやって【ツッパリ・ランド】とやらへ出かけるのでしょう?」
格乃進が口を挟んだ。
茜は機嫌を直し、ニンマリと笑みを浮かべた。
「それには、乗り物が必要ね!」
「乗り物?」
世之介たちは顔を見合わせた。茜は強く頷く。
「そうよ、まさか、テクテク歩いて行くつもりなんかじゃないでしょう? あんたたちの目指す【ツッパリ・ランド】は、とーっても、遠いんだから!」