敗北
「ぐうううっ!」
横たわる風祭は、必死になって起き上がろうと藻掻いている。手の平を地面に支え、上体を起こそうとする。
だが、そのたびにガクリ、ガクリと寝そべってしまう。
「無理に起き上がろうとしてはいけない。お前の制御装置を破壊した。新たな装置を入れ替えなければ、動けないぞ」
助三郎が横たわる風祭を見下ろし、痛ましげな表情になって声を掛けた。見上げる風祭は、視線で助三郎を殺してしまいたいというような、物凄い形相になる。
「なぜだ……。なぜ、俺が負けた? 俺は最強の【バンチョウ】に生まれ変わったはずなのに!」
風祭が呻く。ぐいっ、と顔だけをネジ向けて叫ぶ。
「お前ら、何者だ? ただの賽博格じゃないだろう!」
「いいや」と格乃進が首を振った。
「お前と同じ、賽博格だが、俺たちはこの身体になってから長い。加速状態になってからの戦い方も、慣れている。加速状態になってからは、人間の脳は超高速の反応に対応でききれない。そのため、予備電子脳に交替させ、身体を制御するのだ。だが、充分な期間、行動を慣熟させていないと、その能力を発揮できない。お前は賽博格体になってから、そう長くはないのだろう?」
「ふっ」と風祭は苦く笑った。頷く。
「そうさ、ウラバン様にこの身体にして頂いたのだ……。【ツッパリ・ランド】でな。そこにいる健史が……」
ギョロリと立ち竦んでいる健史を睨む。健史は風祭の視線に「ひっ!」と小さく悲鳴を発し、飛び上がった。
「ここで新たな【バンチョウ】が出現した、と報告してきてな。それで、ウラバン様が俺に調査するよう命じた。ウラバン様の任命されない【バンチョウ】など、存在を許すわけにはいかん!」