加速
賽博格! 風祭が賽博格だって?
世之介はようやく、さきほどからの疑問が氷解するのを感じていた。さっきの木刀での手応えは、賽博格体ゆえのものだったのか。
風祭は、ぐりぐりと肩の関節を動かし、立ちはだかった助三郎と格乃進を舐めるように睨みつけた。
「そう言う、お前らも賽博格らしいな……」
ぐっと腰を沈め、風祭は目を光らせる。実際、風祭の両目は、不気味な青白い光を放っていた。
ぶーん……。
風祭の全身から、奇妙な甲高い機械音が聞こえてくる。ぶるぶるぶるっ、と風祭の全身が細かく震え出した。
世之介は木刀を杖にして立ち上がった。
いったい、何事が起ころうとしているのか。
助三郎と格乃進は顔を見合わせ、頷き合った。その瞬間、二人の姿は世之介の眼前から一瞬にして掻き消えていた。
「あっ!」
世之介は驚きに目を見開いた。
何と対峙しているはずの、風祭の姿も突然、消滅していた。
しゅっ! しゅっ!
空中を、何か切り裂くような音が聞こえてくる。
「何事ですか!」
側にいた光右衛門に尋ねる。光右衛門は、今の出来事を承知しているような表情を浮かべていた。
「助さん、格さんの二人が、加速状態に入ったのです。常人の、数倍から数十倍、恐らく数百倍の速度で動き回り、音速を超え戦っているのです。そのため、わしらには、三人の姿を見ることは叶わないのでしょう」