母親
【集会所】は幾つかの建物が組み合わさった複合施設であった。
中心にあるのは量販店で、一階部分は家族食堂、その食堂の向かい側には遊戯施設が付属している。
住居は中心の施設を取り巻くように建てられ、広々とした駐車場があって、そこには二輪車や、四輪の車がずらりと駐車されていた。住居同士は渡り廊下や、通路で繋がれ、まるで一つの巨大な建物のようだった。住居同士を繋げている廊下や階段は後から無理矢理くっつけたかのようで、様式や素材は統一されておらず、全体に継ぎ接ぎ細工のようである。
驚くのは建物と建物の間にほったからしになっている塵の山だ。うず高く積まれた塵には、遺棄された電化製品とか、食糧の容器、雑誌がごちゃごちゃと固まり、間からは食糧を養分に植物が根を張り、枝を伸ばしている。
番長星を支配しているのは、混乱そのものであった!
駐車場に二輪車が次々と停車すると、建物の扉が開き、中から人々が顔を出してくる。
現れたのは家族連れで、老若男女様々な年齢層で、多くは幼い子供の手を引いていた。中には腰の曲がった老人もいる。
ただし老人とはいえ、身につけているのは派手な色合いの上着や、作業服、学生服で、薄い頭髪を整髪料で固めてリーゼントにしているのがご愛嬌だ。
「お帰り。早かったね」
茜に中年の、やや太った女性が声を掛けてきた。
太っていることを除けば、茜に似た顔立ちをしている。何か台所仕事をしていたのか、女性はしきりと手を厚手のタオルで拭っていた。女性は茜の二輪車の後席に跨っている世之介を見て、尋ねかけるような表情になる。
「その人たちは?」
茜は一つ頷くと、説明を始めた。
「畑の真ん中に火の玉が落ちたって話は聞いてるよね? 空から落ちてきた玉の中に、この人たちがいたんだよ。困っているようだから、連れてきた」
「ふうん」と相槌を打った女性は、世之介を見て愛想笑いを浮かべた。
「それはまあ、大変でしたねえ」