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号泣
「うおおおん、うおおおん……」
あたり構わず、健史の泣き声は響き渡っている。両目から滂沱と涙を噴き出させ、身を捩るようにして泣き喚いていた。その様子は、まるで幼い子供のようであった。
「痛えよお! こいつが、俺をぶったあ! ひどいよお! なんでぶつんだあ!」
健史はいやいやをするように、激しく首を振る。困った世之介は、宥めるように両手を上げ、健史に近づいた。
「あの……まことに相済みませぬ。つい……」
近づいた世之介に、健史はびくっと身を震わせ、尻をぺたりと地面につけたまま、両手を使って後じさった。
「来るな! 厭だあ! 怖いよお!」
世之介は助けを求める視線を茜に向けた。しかし茜も、世之介をまるで怪物を見るかのような視線で見つめているだけである。
目に恐怖の色を一杯に浮かべた健史の仲間たちは、ぎくしゃくとした動きで健史の周りに集まってくると、手を伸ばして助け起こし、二輪車にそそくさと戻っていく。
無言で動力を入れると、振り返りもせず、二輪車に乗ったまま去っていく。爆音は心なしか控えめで、あっという間に見えなくなってしまった。