農地
けたたましい騒音を立て、世之介たちを乗せた二輪車の群れは、巨大な擂鉢の穴から一斉に飛び出した。
飛び出したところは、どこまでも広がる畑である。
【滄海】の客室は、農地に墜落したのだ。
世之介は人家に墜落してなくて、幸いだったと改めて思った。
畑の真ん中を、二輪車は突っ切っていく。
風に揺れる穂先の間に、ずんぐりとした形の傀儡人が、黙々と農作業を続けていた。
傀儡人たちは、騒音を立てて二輪車が通過しても、ちらりとも視線を動かさない。ひたすら、目の前の作業に従事している。
型式から推測して、三世紀は前の型である。
最低限の自己判断と行動指針しか組み込まれておらず、好奇心のような余分なものは一切、備えられていないのだろう。
数台の農作業傀儡人たちは、地面に穿たれた隕石孔に集まってくると、土を運び、元通りに修復するための作業を、早くも始めていた。
二輪車は畑を突っ切ると、舗装された道路へ駆け上がった。舗装路面に車輪が乗ると、さすがにそれまで酷かった上下の震動はぴたりと止まり、快調に二輪車の速度は上がっていく。
世之介が振り返ると、隕石孔の上空に、仄かに埃が棚引いているのが確認できる。まだ巻き上がった埃が風に吹き払われていなかったのだ。衝突の物凄さが、これ一つではっきりと見てとれる。
光右衛門、格乃進、助三郎の三人は、各々二輪車の後席に泰然と席を取り、落ち着いた物腰で跨っている。しかし、イッパチは顔を俯かせ、死に物狂いで、操縦する女性の腰にしがみついていた。