二輪車
光右衛門が大きく頷いた。
「あれは、二輪車というものです。大昔の乗り物で、今では誰も使ってはいません。わしも、初めて見ました」
二輪車は数十台を数えていた。次々と縁から出現すると、見るからに危なっかしく地面を跳ねるように走行し、客室を中心に、渦を巻くようにぐるぐると回っている。
ほとんどが一人乗りであったが、二人が前後に乗り込んでいる二輪車もあった。二人乗りの後部座席に乗っている乗客は、なぜか旗を手に持ち、こちらを威嚇するかのように睨みつけてくる。
旗は日章旗だったり、文字を大書きしたものやら、とりどりである。文字は「御意見無用」とか「世呂死苦」とか「撫血霧」など一目だけでは、何を書いているのか判らない漢字があった。
その頃になって、世之介は二輪車を操縦しているのが、総て女性であることに気付いていた。
しかし、相当に奇妙な格好をしている。
まず、着ているのが、着物ではない。上下が繋がった、作業衣のようなものである。白が多かったが、真っ赤なの、青いの、あるいは黄色と様々な色の作業衣を纏っていた。
髪の毛も、赤、黄色、茶色、中には緑とか、紫色など見ているだけで目がクラクラしてくるような派手な色に染めていた。
二輪車の群れは、かなりの時間、客室を中心にぐるぐる回っていた。
だが、やっと動きが止まり、一台の二輪車が全速力で近づくと、ざざっと横滑りするように停車した。




