隕石孔
ぐーっ、と客室が反対側に傾いている。わっ、わっと一同は反対側に傾いた床を滑っていく。
ごろり、と客室は転がり、さらにごろり、ごろりと何度も転がっていく。転がっていく球体の客室の中で、世之介たちは絹毛鼠のように、ころころと転がった。
「なっ、何で転がっているんだい!」
世之介が叫ぶと、格乃進は叫んだ。
「黙っていなさい! 舌を噛むぞ!」
どーん、と大きな音を立て、客室の転がりはようやく止まった。濛々と細かな土埃が室内で舞い踊っている。
けほけほと咳き込みながら、世之介はよろよろと立ち上がった。下を見ると、イッパチが情け無さそうな顔で仰向けに引っくり返り、世之介の顔を見上げている。目が回っているらしく、大きな目玉がぐるぐると際限なく回転していた。
「怪我はありませんか!」
心配そうな光右衛門の声に、全員「いいえ」と返事をする。客室は完全に上下逆さまに転倒していた。
「ご隠居様、外へ出ましょう」
助三郎が叫んで光右衛門が頷くのを待ち、上下逆さまの扉を開ける。さっと外光が差し込み、世之介は助三郎の後ろから出口に顔を突き出し、外を窺った。
巨大な擂鉢のような地形が目に飛び込む。客室は擂鉢状の真ん中に鎮座していた。擂鉢の表面は焼け爛れ、あちこちから焦げ臭い匂いと煙が立ち上がっていた。世之介の背後から外を眺めた格乃進は、呆れたように呟いた。
「なんと! これは、客室が墜落したときに穿った大穴に違いない。つまり隕石孔というわけだ」
「本当に、この客室がこんな大穴を開けたと申されるのですか? 信じられません」
世之介が問い返すと、格乃進はゆっくりと外へ一歩足を踏み入れ、地面を触る。
「まだ暖かい……。衝突の熱が、残っているのだ。相当に大きな音が響いたことだろうな」