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凍結時間
「何とか、皆、無事のようですな。いや目出度い!」
ニコニコと笑顔になって光右衛門が皆の無事を寿いだ。床が斜めになっているので、足下が大いに不安定で居心地が悪い。
世之介は窓を見上げた。窓の外が燃え上がったと思えば、一瞬の後、こうなった。何がどうなったのか、さっぱりだ。いや、理由は判っている。客室の最後の保護装置が働いたのである。
凍結時間装置である。
客室の外部が、乗客の生命に危険と判断されると自動的に働く装置で、時を停止させる被膜を作り出す。この被膜の内側では、どのような変化も起きない。つまり、外部のどのような変化も受け付けないのだ。凍結時間が働くと、超新星爆発の真っ只中でも、一原子も傷つくこともない。
客室が大気圏に突入し、そのまま、まっしぐらに落下して、装置が働いたのだ。怖ろしいほどの衝撃と、熱が見舞ったはずだが、それは凍結時間に守られ、遮られた。
格乃進の説明に、世之介は理屈では判っていても、いざ体験するとなると、足が震えたものである。だが、それも済んだ。もう安心だ。
いや、そうだろうか?