惑星
客室の窓一杯に、惑星が浮かんでいる。番長星である。
窓から番長星を眺め、光右衛門は感嘆の声を上げた。
「不思議な色の惑星ですなあ! なぜ、あのような色合いなのでしょう?」
番長星は全体に菫色がかった色をしていて、霞のようなぼうっとした暈を纏っていた。時々、惑星の表面に奇妙な光が走る。助三郎が目を光らせ、光右衛門の質問に返答する。
「分光観測により、大気の主成分は窒素と酸素で、地球とほぼ同じです。但し、微量物質が大きく違い、ネオン、アルゴン、ヘリウムなどの稀瓦斯が含まれております。主星の光も地球と違って御座いまして、それがあのような色合いを見せているのでしょう。さらに表面重力がやや小さく、そのせいで成層圏が地球より広がっております。それで霞のような光を纏っているように見えるので御座います」
光右衛門が指を挙げ、さらに質問する。
「それでは、あの光はなんでしょう? 時々、虹色の光が走りますが」
「極光で御座います。先ほども申し上げた通り、番長星の成層圏は大きく広がり、地球で申せば電離層の外側まで達しております。大気圏に含まれる微量物質が太陽からの高速粒子と衝突し、励起して電子を放出させます。それで光って見えるのです。地球では、極地方でなければ見られない極光が、ここでは赤道付近でも見物できます」
助三郎が窓際に陣取り、目を光らせながら、滔々と捲し立てる。