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危険な方法
それでも世之介は焦燥を押し殺し、格乃進に丁寧に尋ねた。
「何が問題なんです?」
格乃進は世之介と、光右衛門の中間を見るようにして口を開いた。
「着陸装置がない、ということなのです」
世之介は虚を衝かれ、一瞬「えっ?」と仰け反った。格乃進の言葉を取り違えたのかと思った。
「着陸装置って?」
助三郎が説明する。
「客室は、宇宙航行をするための設計になっていません。非常事態が起きたら、救助の手を待ち、向こうの協力で曳航されるなり、接続されるなり、という方法を前提にしています。従って惑星に直接、着陸する状況など、考えられてはいないのです」
格乃進は腕組みをした。躊躇いがちに口を開く。
「残る手段は、一つのみ! しかし、相当に危険ではありますな」
光右衛門が静かに尋ねる。
「どのような方法なのですかな、格さん」
格乃進は光右衛門に顔を向けた。
「墜落するのです、ご隠居様」