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一本道
「そんな目をしない! しっかり言いつけを聞かないと、工場を任せられないぞ!」
世之介の隣に茜が顔を出し、隆志に声を掛けた。隆志は「けっ」と肩を竦めた。
茜と連れだって、世之介は作業場の外へと歩いていく。歩きながら茜に話し掛けた。
「学問所はどうだい。楽しいか?」
茜は、ちょっと首を傾げた。
「どうかな……。楽しいというより、吃驚するばかりね! あたし、番長星以外の星について、全然、なーんも知らなかったわ!」
幕府の主導で、番長星には次々と学問所が設置されていた。茜も新たに設けられた学問所に通うようになっていたのである。
二人は両側に農地が広がっている一本道を歩いている。時々、道路を猛速度で二輪車や四輪車が通りすぎた。
茜は世之介の前に飛び出すと、くるりと振り向き、真っ直ぐに見詰めてきた。
「あたし、番長星から外に出たいわ!」
「え?」と世之介は茜の顔を見詰め返した。
茜はキラキラとする瞳で、世之介を見詰めている。