指導
がんがんがん! と自棄のように鉄槌が二輪車の部品を叩いている。ぐわん、と奇妙な音を立て、部品が折れ、床に転がった。
「あーっ! また、やっちまったい! 馬鹿、馬鹿! いってえ何度、しつこく言ったら判るんだ。部品を叩くときは、優しく叩くんだって言ったろう?」
甲高い声が作業場に響き渡る。声を上げているのは、子猫そっくりの技術者である。
子猫に叱られているのは、不器用そうな手つきで工具をいじっている若者。頭はつるつるに剃り上げている。
隆志であった。子猫に頭ごなしに叱られ、隆志は不満そうな顔付きである。
子猫は、とことこと近寄ると、上目ごしに隆志を見上げる。
「ニャンだ、その顔は? 何か文句あるのかニャ?」
隆志の顔が真っ青になった。
「い、いいえ、そんな……」
「舐めんなよ……」
捨て台詞を吐くと、とことこと、その場を離れていく。
世之介はその場の光景を目にして、笑いを堪えるのに必死だった。
笑ってはいけない。隆志はこれでも真面目にやっている。そんな世之介の顔を見て、隆志は恨めしげな表情を浮かべていた。
番長星のあらゆる場所で、同じような光景が繰り広げられていた。幕府の主導による、番長星住民の独立生産計画である。
微小機械の生産が消滅し、住民の生活必需品を賄うため、傀儡人が一部だけ肩代わりをしていたが、全面的な生産拠点を整備するため、微小機械の工場を監督していた子猫の杏萄絽偉童が技術指導を任されたのだ。