商売
じわじわと理解が父親の顔に差し上った。世之介を見詰め、話し掛ける。
「世之介、お前、但馬屋に帰るんだ! お前は立派な跡継ぎとなった……」
世之介は、即座に返答する。
「厭だ! 俺は、家には帰らない!」
父親は仰天した。
「何を戯言を……。お前、本気かえ? 家に帰らず、何をするつもりなんだ?」
世之介の視線が、茜の視線と絡み合う。
「俺も番長星に留まりたい! そして番長星の人間が一人立ちできる手伝いをするんだ。お父っつあん。ついては頼みがある」
父親は、ごくりと唾を飲み込んだ。
「頼み?」
世之介は笑った。
「そうさ。お上は番長星に援助をするそうだ。しかしお上だけでは心もとない。但馬屋の財力なら、充分な援助が可能だ。援助だけじゃない。これは新しい商売のタネになるんじゃないのか?」
とっくりと考え、父親は頷いた。表情が、商売人のものになっていた。
「そうだね……。お上のお声掛かりとなれば、出入りの商人だって一口噛むのは当たり前だ。それに但馬屋の一番乗りが叶えば……」
にっこりと笑顔になった。ぽん、と自分の胸を叩き請合う。
「判った! 但馬屋、番長星への立ち直り事業に一番乗りをするぞ!」
「目出度い、目出度い! これで万事、万々歳と相成りました! ついてはお手を拝借……」
イッパチが、しゃしゃり出る。全員、笑いながら一本締めの用意をした。
「よーい!」
イッパチの合図で、しゃんと一本締め。