問題
光右衛門は、きらりと目を光らせる。
「では、この客室で辿り着ける距離に、殖民星がありますかな?」
「御座います。ぎりぎりでは御座いますが、到達範囲に、一つ古い殖民星があるようです。なにしろ超空間航法が発明される前の殖民星ですから、記録がほとんどなく、名前だけが記載されております」
「なんという星ですかな」
「番長星、とあります」
「番長星……」
世之介は呟いた。殖民星の名称としては奇妙な名称である。
イッパチは早々と立ち直り、ちょこちょこと世之介に近づいて見上げ、口を開いた。
「なんだか、剣呑そうな名前でげすな。そもそも、番長って何のことでげしょ?」
「さあ、判らないよ」
世之介は首を振った。光右衛門は肩を竦めた。
「番長だろうが、番屋だろうが、それとも番所か判りませんが、ともかく行けるところがそれだけなら、仕方ありませんな。格さん、参りましょう」
「はい、ご隠居様」
格乃進は一つ頷くと、操作卓に向かい合った。素早く両手が動き、航路を決定すると、格乃進は再び光右衛門に顔を向けた。
表情が真剣である。
「ご隠居様、一つ問題があります」
光右衛門は伸びやかに返事をする。
「何が問題ですかな?」
「時間です。この客室には超空間歪曲場発生装置が搭載されておりません。ですから、通常空間を光速度以下の速度で移動しなければなりません。目的の星系は半光年ほど離れておりますから、どんなに早く移動しても、向こうに到着する頃には、六ヶ月が経過していることに相成ります。つまり地球に戻るにしても、半年後、あるいは、もっと時間が掛かってしまうかもしれません」