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変身
ちらりと頭目は母親に目をやる。頭目の視線に、母親は、ぎくっと身を強張らせた。
「な、なんだい、その目は?」
「お母さん……」
頭目は静かな口調で話し掛けた。母親は驚きのあまり、大声で叫んだ。
「お母さん、だってえ! お、お前、そんな呼び方、一度だってしなかった……」
頭目は、ゆるゆると首を振った。
「お母さん。僕は今まで、とんでもない間違いを犯していたことに気付いたんだ。僕は今、生まれ変わった気分だよ」
頭目は喋りながら、手を挙げ、自分の髪の毛をさっと撫で上げた。今までぼうぼうの蓬髪だったのが、いつの間にか、きっちりとした七三の横分けになっている。
「狂送団、なんて馬鹿な集団の頭目に収まって、今までさんざん他人に迷惑の掛け通しだったことに気付いたんだ。もう、あんな馬鹿な真似は金輪際やめる。これから、僕は、しっかりと更生して、立派な人間になると約束するよ。お母さんにも苦労は掛けない」
「偉いっ!」
不意に聞こえてきた声に、世之介と頭目は振り向いた。