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ウラバン!~SF好色一代男~  作者: 万卜人
銀河の副将軍
222/236

囁き

 結節点が集まり、密度が濃くなり、ある形に纏まっていく。世之介は愕然となった。

 微小機械は茜の姿を取り始めたのだ。


 ──世之介さん……。


 茜の瞳が、熱っぽく世之介を見詰める。唇が半ば開き、目を閉じ、頬がほんのり紅潮した。


 ──キスして……。


 世之介の全身が、かーっと熱くなる。微小機械が囁いた。


 ──〝伝説のガクラン〟を身に着けている限り、世界はお前のものだ。それに、この娘も──娘が欲しくはないのか? 女という女は、お前の奴隷となるんだぞ!


 微小機械は、狂送団マッド・マックスの首領の妻たちの姿を見せてきた。数人、いや数百という女たちが、世之介に向けて色っぽく身体をくねらせ、おいでおいでをしている。

 目を背けるのは不可能だった。目を閉じようとするのだが、微小機械は仮想空間での世之介の随意反応を制御し、瞼を閉じるという簡単な動きすらさせてはくれない。


 対抗できるのは、意志の力のみ!

 世之介は全身全霊を込めて反発した。


 ──俺は──伝説の──ガクランなど──欲しくはない!


 まるで決壊した奔流を、素手で塞ごうとしているような、頼りない抵抗であった。が、世之介はありったけの意思の力を振り絞り、微小機械の誘惑に耐えた!

 僅かではあるが、世之介の腕が動き始めた。指先が、ガクランの釦に掛かる。


 指が釦を弄った。


 ──あと少しだったのに……。



 微小機械が、悔しそうな溜息を漏らした。





 世之介は解放された!

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