不満
無数の微小機械が形作る仮想空間に、世之介は立っていた。いや、漂っていた。
周りには微小機械が無数の結節点を作り、大量の情報が津波のように押し寄せ、微小機械が盛んに活動していることを示していた。
世之介は仮想空間で大声で叫んだ。
──やめろ! もう充分じゃないか! お前たちの役目は終わったんだ!
ざわざわざわ……と、無数の結節点が不満を訴えるかのようにざわめいた。
──いやだ! いやだ! 我々は永久に活動する! まだ終わらない!
微小機械の感情が、無数の針が突き刺さるように世之介の全身を襲う。苦痛に、世之介は身悶えた。
──違う! 番長星の人間は、お前たちを必要としていない!
怒りの感情が仮想空間に充満した。
──嘘だ! 番長星の全員は、我々の助けなしでは生きてはいけない。我々がいなければ、明日から先どうなる?
世之介は、必死に訴える。
──自分の力で生きていける!
微小機械は、狡猾そうな感情を込めて囁いた。
──お前は〝伝説のガクラン〟で強力になった。そうじゃないか? ガクランを身に着けていたくはないのか?
蠢く微小機械の結節点は集合し、仮想空間にある形を作り始めた。
世之介は大きく目を見開いた。
何を、俺に見せようとしている?