顔
驚きに世之介は仰け反った。ふらっ、と自分の立体映像が揺らぐのを自覚する。
「ど、どうして、そんな結論になるんだ? 俺は金輪際、そんな馬鹿な考えを持ったことはないぞ!」
光右衛門は静かに首を振る。
「微小機械と接続しているのは、世之介さんしかおりません。微小機械に影響を及ぼすことが可能なのは世之介さん、一人だけ……。結論は、ハッキリしております!」
ぐっと腕を挙げ、指さす。
「〝伝説のガクラン〟によって、あなたは今までにないほどの、外向的な性格に生まれ変わりました。何事も積極的で、自信満々。どうです、良い気分だったのではありませんか?」
世之介は不承不承、頷く。
「そ、そりゃ、まあ……」
「あれを御覧なさい」
光右衛門は戦っている二人の賽博格を指さす。助三郎と格乃進は、阿修羅のごとく、群がる暴徒を叩きのめし、千切っては投げ、千切っては投げという形容がぴったりだ。
群がる男女の顔を、世之介は眺める。皆、戦いに喜びを見出し、どんなに賽博格に叩きのめされようが、弾き飛ばされようが、飽くことなく向かっていく。
「助さん、格さんの二人に向かっていく人間の顔。あれは、世之介さんが戦っているときの顔、そのものです!」
衝撃に、世之介は地の底に沈むような気分を味わっていた。あれが、俺の顔?
二人の賽博格に遮二無二、我勝ちに突撃していく人間は、一人残らず狂気、といっていい表情を浮かべている。
両目を思い切りひん剥き、唇は笑いの形に歪み、戦いへの期待で、頬はてらてらと輝いていた。
信じられなかった……。