破綻!
眼前の光景に、省吾はへたへたと力なく座り込んだ。
「なんてこった……。折角の計画が、これでは何のために努力したのか、判らない……」
光右衛門が疑問を呈す。
「世之介さんの性格を読み込んだガクランなのに、あの大騒ぎは、どうしたことです? 身に着けたなら、世之介さんの真面目な性格が乗り移るのではないでしょうか?」
省吾は顔を挙げ、ぶるぶると何度も横に振った。
「違うのだ! あの後、風祭が微小機械の水槽に飛び込んでしまったので、風祭の性格が上書きされてしまったんだ……。ああ、最悪の結果になってしまった……」
世之介は省吾を無感動に眺めていた。ふとあることに気付き、声を掛ける。
「制服の生産を止めることは、できないのか」
省吾は「えっ」と顔を上げた。世之介は制服の山を指さす。
「見ていると、あの山が大きくなっている。微小機械の生産が続いているらしい」
よろよろと省吾は立ち上がり、頷いた。
制服の山は、世之介の指摘通り、むくむくと膨れ上がり、群がる男女が奪っても奪っても高さは減らない。どころか、更に大きくなっていく。
「まさに、その通りです……。微小機械が、あらん限りの能力を振り絞って、全力で制服を生産しているんです! 駄目だ、わたくしには止められない!」
言うなり、両手で顔をがばっと覆い、すすり泣いた。