生身
二人は加速状態を解いた。
途端に、二人が巻き起こした局所的な空気の乱流が、猛烈な風となって、辺りの空気をどよもしている。中心に風祭が、棒立ちになっていた。
二人は目を見開き、注視した。
「あれは……助さん。風祭の様子が変だ」
格乃進の言葉に、助三郎も頷く。
「うむ。風祭の身体が変化しているように見えるな」
助三郎の指摘通り、風祭は変貌していた。
全身を、微小機械が膜のように覆って、何か盛んに活動をしている。表面に漣のような波紋が広がっていた。
「風祭の変身なんだ……」
世之介の言葉に助三郎は「何だと?」と聞き返していた。格乃進がぐい、と指さし、叫んだ。
「見ろ! 風祭が……」
ずるり、と膜のようになっていた微小機械が風祭の全身から抜け落ちた。後には、一人の人間が、虚脱した様子で立ち尽くしている。
恐る恐る、助三郎が近づく。
「お前は……誰だ? 風祭なのか」
立っていたのは、年齢およそ二十歳前後と思える、若い男性であった。ひょろりとした身体つきで、青白い顔をした、とても風祭とは同一人物とは思えない男である。
男は薄目を開け、近づく賽博格を見詰める。視線が下がり、自分の身体を見下ろした。
ぎくり、と男の表情が驚きに変化した。
「俺は……! 戻った! 俺は、戻ったぞ! 生身の身体に戻ったんだ!」
もう一度、助三郎は静かに尋ねる。
「お前の名前は?」
「俺の名は……風祭淳平!」
男は、キッパリと応えた。二人の賽博格は、驚きに顔を見合わせた。