怒り
どすん、と横から子供の一人が風祭の腰に蹴りを入れてきた。風祭はよろけ、よろよろっと地面に倒れこむ。
「根性なし!」
蹴りを入れた子供は、風祭の正面に立ちはだかり、憎々しげに叫んだ。すると他の子供たちも、同調するように囃し立てる。
「根性なし! 淳平の根性なし!」
ぱっ、と誰かが風祭の顔に砂を投げ掛ける。風祭はわっ、と顔を手で隠した。
しかし仲間の子供たちは容赦しない。わあーっ、と集まってくると、手に手を伸ばし、風祭の押さえていた手を引き剥がした。
両手両足を掴んで、地面に大の字にさせる。一人が圧し掛かり、風祭の鼻を掴んで穴を塞いだ。たまらず、風祭の口が、ぱかっと開く。
即座に開いた口に、砂が押し込められる。風祭の口にじゃりじゃりとした砂と小石が一杯に溢れた。
ぺっぺと砂を吐き出すが、子供たちは次々と砂利を詰め込む。圧し掛かっている相手は、容赦なく風祭の顔を殴ったり、頬の肉を捩じ上げたりして、苦痛を与えていた。
痛みと怒りに、風祭は猛烈な泣き声を上げていた。風祭は涙に滲んだ視界で、さっきの大人に救いの視線を投げかけた。
しかし、子供たちに喧嘩の仕方を教えていた男は、げらげらと笑って、止めようとすらしない。男を見上げる風祭の胸に、絶望が真っ黒に膨れ上がった。
「淳平、舐められたら、おしめえだぞ! よーく判ったか?」
これが風祭の子供時代か!
世之介は風祭の記憶を追体験して、怒りに震えていた。