根性なし!
「てめえら、ちゃんとメンチを切ったら、ガンを飛ばすんだ! 舐められたら、おしめえだぞ! さあ、やって見ろい!」
番長星によくある【集会所】の一つである。駐車場には、数人の子供が、がなりたてる一人の大人の男の周囲に集まり、真剣になって耳を傾けている。
がなりたてる男は、年齢四十代くらいで、頭をちりちりパーマに固め、がっしりとした身体つきをしていた。男は、じろりと世之介を睨む。
「やい、淳平! なんだ、その根性の入っていないガンの飛ばし方は? もっと腹に力を入れて、睨みつけるんだ!」
のしのしと歩いてきて、ぐっと腰を落とし、物凄い形相で睨みつける。
世之介は悟っていた。これは風祭の記憶だ。自分は今、風祭の幼い頃の記憶に入り込んでいる! 風祭淳平……これが本名なのだ。
世之介の……いや、風祭の幼い記憶に恐怖が湧き上がる。世之介は風祭の恐怖を味わっていた。
視界が不意に滲んで、辺りがぼやけた。風祭が両目に涙を溢れさせたのだ。男は呆れたような声を上げた。
「なんでえ……ちっと睨んだら、もう泣き出すなんて、なんてぇ根性なしなんだ!」
あはははは……と、周囲の子供たちが大声で笑い出した。風祭は笑い声に、身を小さくしている。