制御室
茜が割り込む。
「ねえっ! お兄ちゃんは、どこ?」
省吾の視線が茜に向かう。唇が微かに動き、言葉を押し出す。
「勝又勝《まさる》のことか……?」
茜は勢いづいた。
「そうよっ! あたしのお兄ちゃん、勝又勝の行方! どこにいるの?」
茜の顔が青ざめた。
「まさか……お兄ちゃんも賽博格に?」
省吾の唇が笑いの形に歪んだ。
「いいや……。あいつは賽博格になることを拒否した。賽博格の力を借りるなど、男らしくないと、ほざいてな……」
茜は明らかに、安堵の溜息を吐いた。
「お兄ちゃんらしいわ……。それで、お兄ちゃんは、どこ?」
突然、省吾はしゃっきりと回復した。猛烈な速度で、思考が回転しているかのようだ。
「制御室へ連れて行ってくれ! すぐそこだ! ほら、この先の曲がり角を右に……突き当たったところに、扉がある……!」
腕を挙げ、震える指先を当て所なく前方に彷徨わせる。助三郎はひょい、と省吾の身体を抱え上げ、急ぎ足になった。
省吾の言葉通り、曲がり角の先に扉があった。
格乃進が扉の取っ手を握りしめる。
「鍵が……!」
格乃進の顔が真剣になる。ぐっと全身に力が込められた。服の下から、賽博格の逞しい筋骨がぐっと盛り上がった。
べきんっ! と音がして、扉の取っ手が弾け飛んだ。格乃進がどすんと肩を押し当てると、蝶番ごと扉が倒れこむ。




