正直者
世之介は唇を舐めた。いよいよ肝心の疑問を尋ねる時がきたのだ!
「それで、どうして、俺を番長星におびき寄せたんだ? 何が目的だ?」
省吾の唇が真一文字にニイーッと、微笑の形に引き伸ばされる。
「坊っちゃんに〝伝説のガクラン〟を身に着けて貰いたかったからです!」
世之介は再び自分のガクランを見た。
「俺に?」
「はい。それで、そろそろ、わたくしにガクランをお返し頂きたいと思いまして。もう、よろしいでしょう? それは、わたくしの物です」
省吾は座ったまま片手を差し出す。世之介は怒りの声を上げた。
「返せ、だと? 今更、何だ! なぜ、俺に着せる必要があった?」
「坊っちゃんでしか、できなかったからです。そのガクランは、見かけは唯のガクランでも、中身は一種の──まあ、知性体とでも言えるかもしれませんな。ガクランと着用者は一体となって、あらゆる事態に対応します。坊っちゃんが経験なすったことは、ガクランは着実に学び、成長するのです。もう、すでにガクランは、完全になりました!」
世之介は軽く頭を振った。
「だから、なぜ、俺なんだ?」
「坊っちゃんは正直者……それも、馬鹿と超が付くほどの正直者です。しかも、真っ正直で、正義感もお強い。わたしは坊っちゃんが、こんな赤ん坊のころから見守っておりますから、ようく知っております。ですから、ガクランの着用者として理想的だったのです」




