相席
「こちらこそ」と世之介は挨拶を返した。
旅慣れた光右衛門と名乗る老人の様子に、内心ほっとしていた。宇宙旅行が手軽になり、眼前の、光衛門のような老人の宇宙漫遊旅行が、流行っていると聞いている。
第一、イッパチと二人だけで顔をつき合わせていると、こっちがおかしくなりそうな気分だったので、この相席は救いであった。
「そうそう、こちらの二人の紹介が、まだで御座いましたな」
老人はくるりと振り帰ると、二人の賽博格に顔を向けた。
「こちらの二人は、わしの供の者で、助さん、格さんと呼んでおります。まあ、わしの身の回りの世話と、護衛係で御座いますな」
「助三郎で御座います」
「格乃進と申します」と二人は短く挨拶をする。助三郎と名乗る賽博格はやや小柄で、痩せているが、格乃進と名乗った賽博格は、がっしりとした巨体の持ち主であった。
「ちょっとお待ちを……」
小間使い杏萄絽偉童は呟くと、身を硬直させ、目を虚ろにさせた。船の主電脳に記録を照会しているのだ。やがて杏萄絽偉童の顔に安堵の表情が浮かんだ。
「確かに相席の指示が出ております! お客さま、それで宜しいので御座いますか?」
世之介は頷いた。むしろ歓迎する気分が強い。老人に向かい、丁寧に頭を下げた。
「旅慣れぬ若輩者で御座いますが、どうぞよろしく……」
「おお、おお、これは慇懃なご挨拶、痛み入ります」
光右衛門は莞爾と笑みを浮かべた。