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【滄海】

 近づいてくる宇宙貨客船【滄海】は、葡萄の房のような形をした宇宙船だった。真ん中に通路用の中央柱シャフトが一本貫き、中央柱の周りを無数の客室が取り巻いている。客室は球状で、幾つもの客室が鈴なりになっているのは、まるで葡萄の房そっくりである。


 世之介とイッパチは、連絡船シャトルの窓に顔を押し付けるようにして、近づいてくる【滄海】を眺めている。地球の衛星軌道上に浮かぶ宇宙船は、真空のくっきりとした光と影のせいで、距離感が判らない。すぐ近くに浮かんでいるように見えるが、全長一尋はあろうかと思われる宇宙船は、中々近づいては来なかった。


 二人の乗り組む連絡船は、百人乗りという大きさで、真ん中の中央通路を挟み、両側に五十人がずらりと席を埋めている。服装は、宇宙旅行用に特別に仕立てられた作務衣である。光沢のある生地で、縫い目がどこにも存在しない。ぴっちりとした筒袖で、袂がなく、動きやすい。


「いよいよでげすな、若旦那。あれで若旦那は尼孫アマゾン星へとお出ましになられるという算段でげすよ!」


 イッパチに話し掛けられ、世之介は「うん」と生返事を返す。イッパチは不思議そうな顔つきになって、世之介を見上げる。


「どうなすったんで? 若旦那、なんだか浮かない顔つきでござんすね?」


 世之介は答えなかった。実を言うと、不安で胸が押しつぶされそうな気分だったのだ。

 世之介が宇宙に出るのは、これが三度目。最初は中等学問所での修学旅行で、その時は月への旅である。


 二度目は高等学問所の修学旅行で、火星へと旅をしている。どちらも、太陽系内で、恒星間旅行に必要な、超空間歪曲転移ワープは経験していない。歪曲転移については、色々と聞いてはいるが、これが初めての体験であった。


 連絡船の内部は無重力状態のままだ。そのせいか、イッパチは普段よりウキウキしているように見える。いや、これが普通か?

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