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唐変木
穴の内部は狭い通路になっている。
真っ暗で、何も見えない。手探りで両側の通路の壁を伝いながら、世之介は遮二無二、前進した。
ふと、指先が扉の取っ手のようなものを掴んでいた。世之介はぐいっと捻じると、脱兎のごとく、内部に飛び込んでいた。
「きゃあっ!」
何か柔らかいものに世之介は躓いていた。同時に上がる、鋭い悲鳴。
な、なんだ?
世之介はうろたえていた。鼻先に、きつい香水の香りが漂う。
ぱちり、と音がして、さっと辺りに薄桃色がかった光が満ちた。照明が点ったのだ。
「何よ、あんた!」
「うわっ!」
驚きに世之介は飛びのいていた。
目の前に、数人の女たちが群がっている。全員、肌も顕わな衣装を纏い、柔らかそうな敷布や、布団に寝そべっている。
全員が眠そうな表情を浮かべていた。が、目の前に現れた世之介の存在を認め、怒りに変わる。
「誰よ、この唐変木! ターちゃんの留守に、押し入ろうったって、許さないからね!」
「タ、タ、ターちゃん?」
世之介は背中を壁に押し付けた。
頭目の輸送車の内部に女がいる!
それも沢山!




