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Born to be wild!
どこまで真っ直ぐ伸びる道路を、世之介たちの二輪車が快調に飛ばしている。しかし、単調な景色が続く旅に、世之介はやや飽き飽きしてきた。
ぼんやりしていると、うとうとと眠くなってくる。
出し抜けに音楽が鳴り響き、世之介は驚いて回りを見回す。
♪Get your motor runnin!
♪Head aut on the highway!
歌詞は英語だった。少なくとも、そう聞こえる。内容はさっぱり判らないが、ひどく音量が大きく、怖ろしく粗っぽい歌い方であった。
「な、なんだっ!」
「目が覚めた?」
隣の茜が、含み笑いをして話し掛けて来た。
「二輪車で遠征するときは、今こうやって聞こえている音楽を鳴らすのが決まりなんだ!」
二輪車には、音楽を鳴らす装置が組み込まれているらしい。
世之介の聞いているのは『ステッペン・ウルフ』の『ワイルドに行こう!(Born to be wild)』であった。
だが、この曲が使用された『イージー・ライダー』という二十世紀の映画など、見たこともない世之介には、初めて聞く音楽である。