出発
二輪車に跨り、世之介は一杯に梶棒を握りしめ、動力機関を全開にした。
ばるるるるん!
けたたましい騒音が、突き出した排気管から響き渡る。
本来、番長星で使用されている二輪車も、四輪車も、燃料を燃焼させる形式ではないから、排気音が出るわけがない。
だが、まるで音がしないというのは気分が出ないとかで、無理矢理うるさい人工的な音を立てる装置を内蔵している。
世之介は辺りを圧する音に、うっとりとなっていた。なんだか、自分が一段偉くなった気分である。
背後の仲間の二輪車を振り返って「行くぜ!」と叫ぶ。二輪車に跨る助三郎と、格乃進は無言で頷いた。
蹴飛ばされるように世之介の二輪車は【集会所】の駐車場から舗装路へと飛び出した。
茜の説明によると、目的地の【ツッパリ・ランド】は目の前の道路を真っ直ぐ、どこまでも進むと、辿り着くらしい。茜は世之介の隣の車線に自分の二輪車を並んで併走してきた。
ぴったり横に近づくと、茜は世之介にさかんに何か話し掛ける。
「スイッチを……して……が……できる……」
茜の言葉は風きり音のため、途切れ途切れである。把手の部品をしきりに指さしている。
世之介は自分の二輪車の把手を見詰めた。
中央の目立つところに、スイッチらしきものが一つ、ある。どうやら、茜の指さしていたのは、これらしい。世之介は片手を把手から離し、スイッチを押した。