禁制
「ふん!」と世之介は卓にどかんと両足を投げ出した。
「それが、どうした! 俺は、俺だよ」
「世之介さん……」
光右衛門が用心深げに、声を掛ける。世之介はぐい、と光右衛門に首をねじ向けた。
「なんでえ、爺さん!」
「こら! 何てことを!」
助三郎が目を丸くして身を乗り出す。顔には怒りが差し上っている。光右衛門は助三郎を抑えて、言葉を続けた。
「まあまあ……。世之介さん、それより【ツッパリ・ランド】を目指す、という当初の目的は、どうなりました? まだ、同じお気持ちですか」
「当たり前だ! こんなチンケな星に、いつまでもいられるかっ! 何とかして地球へ戻って、今度こそ尼孫星を目指すぜ。あそこじゃ、俺を待ってる女たちがウジャウジャいるって話じゃないか」
吠え立てた世之介は、天を仰いで「けけけけ!」と笑い声を上げる。
呆然と、一同は世之介を見詰めた。
「成る程」と光右衛門は頷いた。
「まあ、世之介さんの目的はともかく、わたしも【ツッパリ・ランド】については、気になることがあるのです。あの、風祭と申す、賽博格……」
「はっ」と格乃進が顔を上げた。
「やはり、ご隠居様も同じことをお考えでしたか?」
光右衛門は重々しく頷いた。
「はい、あの風祭と申した賽博格は、明らかに戦闘用の改造を受けておりました。事故などで、やむを得ず賽博格手術を受ける人間はおりますが、戦闘用の加速装置の装着は、幕府によって禁じられております。いったい、どこからあの賽博格は、加速装置を手に入れたのでしょうか」
格乃進も同意した。
「まったく、その通りです。戦闘用の加速装置をなぜ、風祭が装備しているのか、不思議です。加速装置は御禁制の品のはず」
光右衛門は厳しい目付きになった。
「〝抜け荷〟の疑いがありますな。何か、よからぬ企みが匂いますな」