さよなら理想の日々よ
掲載日:2026/06/01
「……ごめん、俺、好きな人がいるんだ」
断られたと頭が考えるまでに、どれだけの時間があっただろう。
え、と二の句が継ぐよりも先に、彼が話を続ける。
「君のことも、大切に思っているよ。でも、好きという感情とはちょっと違うかなって」
「そう、そうなんだ……」
答えに窮するというのは、こういう時のことを言うんだろう。
私は、ようやくそんなあやふやな言葉が出てくるぐらい、頭が働いていなかった。
「だから、友達でいよう。これからも、ずっと」
友達、その言葉は、私にとって、今となってはほとんど意味をなさない。
ただ、好きになった人に、別の好きな人がいたっていうだけなのに。
なのに、私はとても辛い。
「……わかった」
それでも言葉を絞り出す。
「彼女さん、大切にしてね」
もちろん、と彼は言った。




