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7話 公爵家の秘密とは

大人しくお土産に貰ったクッキーをモソモソ食べた。

もちろん一番好きなチョコチップのやつだ。

というか、箱を開けてみたらなんと三分の二がチョコチップだった!

さすがヒューゴ、わかってらっしゃる。

そして今日も安定の美味しさだよ、カステラおばさん!!


一枚食べ終わったところで、向かいに座っていた私にヒューゴが話しかけてきた。

正面から見られると、彼から放たれる隙のないインテリオーラで固まってしまいそうだ。


「ルーはコックス家についてどれくらい知っている?」


ほえ?コックス公爵家について?

……なんでそんなことを急に訊くんだろ。

今更じゃない?


アカネイルにおいて、我がガルシア家が『武力の要』なら、コックス家は『知力の要』と認識されている。

『知のコックス、武のガルシア』と呼ばれ、その影響力と発言力でこの国を支えている二大勢力なのだ。

コックス家は先祖代々アカネイルの宰相を輩出し、その手腕で国を発展させてきた。

私には眩しいインテリ一族である。


「コックス家はアカネイルの宰相を代々務める由緒正しい家柄で、その知性で国と国民を導いている……っていうことなら知ってるけれど」


私の返事に、ヒューゴがグレーの瞳を丸くした。

昨日は暗くて黒に見えていた髪色も、今は明るいお陰で綺麗なダークブルーなのがよくわかる。


「予想外だな。優等生の解答だ。以前のルーなら、『ヒューのおうち?頭が良くてみんなマジメ~』とか言ってそうなのに」


真顔でとんでもないことを言うな、ヒューゴめ。

その私の真似らしき台詞と、凛々しいお顔のギャップが激し過ぎる……。

そして何より、やっぱり私っておバカだと思われてたじゃん!

いや、仕方ないけどさ。

実際過去の私、おバカ発言乱発してたしさ。


「私も日々成長してるんですー!いつまでもおバカで可愛いルイーザではないの。これからは、かしこ可愛い私になるの!!」


ビシッと決めたつもりだったが、今のもかなりのおバカ発言ではなかろうか?

何が『かしこ可愛い私』だ。

『賢い私』だけでいいのに、ルイーザの顔が前世より可愛いせいでつい浮ついたことを言ってしまった。


「あはは!悪かったよ。おバカだなんて思ってないさ。可愛いとは確かに思っているけど。そうではなくて、ルーにもうちの『裏の顔』について話しておきたくてね」


ヒューゴ様が笑ったーー!!

しかも、今すごいこと言われたんでないかい?

ああ、笑顔が尊い……無理……。


しかし、衝撃が大き過ぎて全部は処理仕切れないと咄嗟に判断した私は、一旦スルーして会話を進めることにした。

最後にとても重要なことを聞いてしまった気もしたからだ。


「『裏の顔』?コックス家にそんなものがあるの?」


「ああ。うちの表の顔は宰相として政治を司っているが、裏ではこの国の暗部組織を率いている」


え?暗部組織?

サラッと言われたけど、それってかなりの国家機密的事項なのでは!?

乙ゲーの世界が一気にきな臭くなってしまった!

そんな事実、ゲームのストーリーには出て来なかったよね?


「暗部組織って、諜報機関ってこと?情報収集とか、情報操作したりする……」


「ルー!まさにその通りだ!!話が早くて助かる。テオドールには昔、『なんだそれ?そんなもの必要あるのか?』と言われたよ」


感嘆したように目を輝かせて言われると、推しに褒められて照れ臭くなってしまう。


えへへ、それほどでも。

それにしても兄よ!「なんだそれ?」はないだろう。

仮にも騎士団長の息子が情報の価値を理解出来ないとは、致命的ではないか。

だからお前は脳筋なんじゃーっ!!


「お兄ちゃんはともかく、だから昨日ヒューは私に心配するなって言ったんだね。謎が解けたよ」


「そうだ。グレモナの戦力はうちが調べた情報だからな。出所も確かだから負けるなど考えられないし、テオドールもすぐに帰ってくるだろう」


「ありがとう。私を安心させるためにそんな大切なことを教えてくれたの?でもそんな裏の顔を持ってたら、ヒューは常に危険と隣り合わせなんだね。大丈夫?」


私が不安そうに尋ねたら、ヒューゴは右の口角を上げながら不敵に笑ってみせた。


「簡単にやられるほどやわではない。普段からテオドールと手合わせをしているしな」


そうか、だからヒューゴ様は細マッチョだったのか!

宰相の息子で文官のくせにいい体してると思ってたんだよねー。

あ、あくまでゲーム内のスチルのヒューゴ様の話ね。

もちろん服も着てるから、ほぼ私の妄想なんだけど。


「無茶はしないでね。あ!私気付いちゃったかも……。もしかしてガルシアはコックス家からの情報のおかげで勝ち続けてこられたんじゃない?そうだよ、おかしいとは思ってたの。ヒューの家が情報を操作して、うちが有利に戦えるようにしてくれてたんじゃないの?」


絶対そうだ!

きっと父や兄に正確な情報を伝えつつ、陰で暗躍してくれてたに違いない。

さすがにやる気だけで連勝出来るほど甘くはないはずだ。


「参ったな……よくそこまで考えたな。確かに裏で動くこともあるけれど、実際に戦い、勝利をもぎ取ってきたのは紛れもなくガルシア率いる騎士団だ。彼らの努力と強さの賜物だよ」


なんて謙虚!!

さすが私の推し!!


「ヒュー、今までガルシアを助けてくれてありがとう。これからもあんな父と兄だけど、よろしくお願いします!!」


ガバっと頭を下げたら、また頭をポンポンされてしまった。


「当たり前だ。任せてくれ」


ヒューゴの優しい口調と手付きが恥ずかしくなって、「いい子のヒューには私のチョコチップクッキーを一枚授けよう!」なんてわざと偉そうに言いながら、ヒューゴの口に突っ込んでみたら、「独り占めしないなんてルーも大人になったな」って笑われてしまった。


ヒューゴが笑ってくれるなら、ま、いっか。


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