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転生したら脳筋一家の令嬢でしたが、インテリ公爵令息と結ばれたので万事OKです。  作者: 櫻野くるみ


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2話 片眼鏡の執事も脳筋です

屋敷の玄関から外へ出ると、そこには整然と並んだ騎士達で一杯だった。

なかなか圧巻の光景だ。

そしてさすがの侯爵家、無駄に敷地が広いのがよくわかる。

門が遥か彼方に見えている。


あ、そうだった。

今からお父さんが騎士団連れて出陣するから、出陣式するんだっけ。

って、「お父さん」って呼び方もどうなの?

普通の令嬢は「お父様」とか呼ぶものじゃないの?

なんか庶民的なんだよなぁ。

「親父」じゃなくてまだ良かったか。

私が「お嬢」じゃ、お父さんは「親分」とか「親父」とか呼ばれててもおかしくないもんね。

「おやっさん」ってのもあるかもしれない。

まあ、それは子分の呼び方だけどさ。


騎士達を玄関のポーチの上から見下ろして……って言っても、みんな背が高いから全然見下ろせてはないけど、つらつらとくだらないことを考えていたら、隣に執事長のトーマスが立った。


「ねぇ、トーマス、今回はどこの国と戦うんだっけ?向こうの戦力は?」


我が王国、アカネイルは海にも面しているが、内陸側は三つの国と接しているため、小競り合いから戦争まで、昔から争い事は日常茶飯事だ。

ガルシア家はアカネイルの武力の要であり、王国騎士団に匹敵するほどのガルシア騎士団を所有している。

彼らは主に領地で鍛練を積んでいるのだが、父の一声でどこへでも遠征し、その迷いのない戦いっぷりは『アカネイルの守護神』と呼ばれている。

……って、単に脳筋なだけじゃね?

よく言えば命令に忠実だけど、あやつらは絶対に勢いだけで戦ってるって!


諸々な事情に不安を感じていると、トーマスから返答があった。

ちなみにトーマスは片眼鏡にグレイヘアの、『ザ・執事』な男である。


「今回はグレモナ相手ですな。騎士、傭兵など三百人ほどが国境に押しかけているそうです」


へぇー、敵は三百か。

……え?


「いやいや、ここに集まっている騎士だけでもっといるよね?」


「そうですな。ざっと五千ほどかと」


は?

三百人に対して五千人?

多すぎじゃね?

というか、もはやここってライブ会場じゃん!

ここから「調子はどうだ!」とかやってみたい。


「これだけ居るなら、今回はガルシアから応援は呼ばないんだよね?」


すでに大幅に戦力が勝っているのだ。

ガルシア領にいるうちの騎士団を呼ぶ必要はない……はず。


「もちろん後ほど合流させます。一万ほどですが」


はぁぁ!?

なんで呼ぶ必要があるんだよ!

相手三百だよ?

あ、もしかして相手の援軍が後からわんさか駆けつけるのか?


「グレモナは援軍が来る予定があるの?それとも今の三百人は囮だとか?援軍が別のルートから攻めて来るんなら、うちも兵力を分散させないとね!」


たった三百の相手に、一万五千で迎え撃つ理由が何かあるに違いないと色々考えてみたのだが。


「お嬢、さっきから何を仰っているのです?我が主はどんな戦いでも注げるだけの戦力で挑みます。分散なんてとんでもない。全戦力を一点集中!!先祖代々の教えではありませんか」


あーほーかーーー。


思わずクラっとしてしまった。


でもそうだった、うちはずっと馬鹿みたいにそのやり方、つまり無策で戦ってきたんだった。

よく勝ち続けてこられたもんだ。

よその国、馬鹿なの?

トーマスも、片眼鏡なんてしてるからてっきりインテリかと見せかけて、思いっきり脳筋じゃん!!


呆れていると、兄のテオドールが近付いてきた。


「ルー、見送りありがとな。今回も思いきり蹴散らしてやるから安心してな!」


『イケ夢』の立ち絵通りのテオドールだ。

騎士団の制服にハチマキ、赤茶色の短い髪がワイルドな長身イケメンだけども……。

ハチマキって何!?

お前は体育祭の応援団長か!!


プレイ中は特に疑問を感じなかったけど、実際に見るとすごい違和感を感じる。

そして、そこはかとなく漂う脳筋臭……。


「ご、ご武運をお祈りしています。あ、お兄ちゃん、敵がもし予定外の行動を取ったらどうするの?一応いくつか作戦があったほうが良くないかなーなんて」


あまりに無策過ぎて不安になり、つい口出しをしてしまった。


「作戦?そんなのは臨機応変にやるさ!」


いやいや、あなたのは「臨機応変」じゃなくて、「行き当たりばったり」って言うんだよ。

ほんとよく今まで無事だったなー。


そうこうしていると、騎士団長の父が颯爽と姿を現した。

長い黒のマントが格好いい。

そもそもうちの家族って、見た目はいいんだよな。

もちろん私もね。


私に気付くと一瞬目を細め、柔らかい表情になった父。

うん、うちの男性陣は相変わらず私に甘い。


マントを靡かせて騎士達を見下ろすお父さん。

しかし、その時私は目にしてしまったのだ。

マントに刺繍された『闘魂』の二文字を!!


ぶはっ!!

なに『闘魂』って?

猪○?アントニオ猪○なの!?


むせて咳き込む私の背中を、サリーがさすってくれていた。

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