表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生したら脳筋一家の令嬢でしたが、インテリ公爵令息と結ばれたので万事OKです。  作者: 櫻野くるみ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

16/20

16話 手段は選んでいられません

「さて、まずはテオドールだな」


ヒューゴパパも一緒に戦術を練ってくれるらしい。

このアカネイルの国を宰相として知力で導いているお方である。

心強い。


「お兄ちゃんなら、強いけど単純だから、目眩ましや二刀流はどうでしょう?鞘をフェイクで使うとか」


私は予め考えていた少し卑怯な手を二人に提案してみた。

私達は執務室のソファーセットに腰をおろしているが、私の向かいに宰相、隣にヒューゴが座っている。

以前ならヒューゴ親子は並んで座っていたため、ヒューゴとの関係性の変化を感じて少し気恥ずかしい。


「ははは!!ルイーザちゃんの思考は面白いな。確かにテオドールの弱点はあの直情型なところにある。真っ直ぐで気持ちのいい男だが、いかんせんまだ若いからな。揺さぶりをかけて崩すのはいい作戦だ」


おおっ、インテリのヒューゴパパに誉められてしまった!

やったね!!私の作戦自体はあまり褒められたものでもないけど。


「そうですね。二刀流というか……短剣を使いましょうか」


ヒューゴが何か閃いたようで、目がキランと光った気がした。


「短剣?それってダガーのこと?」


「ああ、よく知ってるな。うちはガルシアみたいに表舞台で戦うことより、室内での襲撃に備えた鍛練を積んでいるから、ダガーの方が扱いに慣れているんだ。戦闘中に効果的に取り入れれば勝機はあるだろう」


えっ、ヒューゴがダガーを扱うの?

他のゲームではダガー使いって見たことあるけど、ヒューゴとダガーの組み合わせなんて、そんなのビジュアル的に格好良すぎるでしょ!!

乙女ゲームだったからスチルにそんな場面は無かったし、絶対見たい!!


「テオドールはいいとして、問題は当主だな。あいつは将軍として優秀だ。小手先の撹乱に惑わされる男ではない」


お父さんってば、ただの脳筋じゃなかったんだ。

宰相にこれだけ評価されているのは、娘としては素直に喜ばしいことだ。

兄は完璧脳筋だと思われてるみたいだけど。


「将軍にはいつもの剣で堂々と挑むつもりです。テオドールには勝たないと将軍に挑戦すら出来ませんからね。多少小狡い手を使おうと致し方ありません」


うんうん、お父さんがラスボスだからね。


「勝てる見込みは?」


「まず無いですね。体力や持久力も桁外れなお方ですから」


「そうだな。あいつは超人的だからな」


親子が頭を悩ませている。

お父さん、スーパー◯イヤ人なのかな?


「やはり、死ぬ気で挑むしか方法はありませんね」


「そうだな。いかに軽傷で済ませるかだな」


「ダメーーーッ!!ヒューが傷付くなんて絶対ダメ!!」


思わず立ち上がった私に、二人が眉を下げる。


「ルー、気持ちは嬉しいが仕方ないんだ」


いいや、絶対駄目だ。

ヒューゴの血なんて見たら私がショック死する。


何かいい手は……。


ふと頭に前世のテレビで見たシーンが蘇った。

そう、あれは刑事物のドラマで、紅茶をやけに高い位置から入れるのが上手い刑事さんが竹刀でやっていた技。


剣道の達人に対して、刑事さんが決めた「巻き技」とかいうやつ。

画面にはちゃんと映ってなかった気がするからよくわからないけど、西洋の剣でも可能な技なのだろうか?


「ね、ヒュー。『巻き技』って知ってる?多分こう剣先を絡ませて、巻き上げて剣を飛ばしちゃうの。本当に出来るのかは知らないんだけど」


ドラマでかじっただけの知識だったが、二人が模擬刀をどこからか持ってきて、実践し始めた。

相手の剣先を絡め取り、動きを封じている。


「なるほどな。チャンスは少ないだろうが、うまくいけば一気に片が付くな」


「手首の柔らかさと素早い返しで剣先を絡ませて弾くのか。練習が必要だが、その価値はあるかもしれない」


宰相とヒューゴは頷くと、ニッと笑い合った。

どうやら挑戦することにしたようだ。


え、ただの思い付きだったのに良かったの!?

でも刑事さんもこの技だけをひたすら練習したって言ってたし、成功すればすごい威力なのかも?


方向性が決まったところで、宰相は部屋を出て行ってしまった。

どうやら気を利かせてくれたらしい。


「あとは練習あるのみだな」


私のより近くに座り直しながらヒューゴが言った。

二人きりになった途端、雰囲気が甘く変わったのがわかる。


「無理はしないでね?いざとなったら私の『お願い大作戦』で……」


「『お願い大作戦』?誰にどうやってお願いするつもり?」


「そんなの、お父さんとお兄ちゃんに『結婚許して?おねがい』って」


私は両手を胸の前に組んで、首を傾げて「おねがい」と言ってみた。

某◯ンリオのマイメ◯ちゃんである。

キュルンと、あざとくやるのがポイントだ。

非常に恥ずかしいが、この際手段など選んではいられない。

あの私に甘い父と兄なら、ヒューゴがピンチに陥ってもこれでなんとか……。


「駄目だ!却下。そんな可愛いお願いポーズ、効果は抜群だろうが、勿体無くて誰にも見せたくない。やるなら俺の前だけにして。何でも叶えてあげるから」


へ?

まさかのヒューゴに効果あり?


可愛い可愛いと肩を抱きながら頬を緩めるヒューゴに戸惑ってしまう。


宰相が戻ってくるまで、「もう一回やって見せて?」「ああ可愛い」というヒューゴの甘やかしは続いたのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ