11話 君は本当にルーなのか?
あっという間にデート当日を迎えてしまった。
ヒューゴのお休みの日に合わせると伝えたら、「じゃあ俺の次の休みで」と言われ、あれよという間に決まってしまったのだ。
私は基本は白だが、袖に黒のストライプ、所々黒のリボンやレースが飾られたモダンなワンピースを着せられていた。
サリーが絶対この服がいいと譲らなかったのである。
なんだかヒューゴとのデートが決まってから、使用人達がずっと生暖かい目で見てくるので居心地が悪い。
予想通りにサリーが光の速さで噂を広めた結果だった。
おおっ!この服、ちょっとマイ・フェア・レディを思い出すなー。
あれはドレスだったけど。
あっちが『脱・田舎娘』なら、こっちは『脱・脳筋娘』ってところだね。
勝負服にピッタリだし、今日はヒューゴに釣り合う『インテリ女子』目指してやるぜ!!
鏡の前でクルクルしながら、私は脳筋を払拭するために奮闘することを心に誓った。
そして、最近私の頭を悩ませている「プロポーズはどこまで本気か問題」についても、ヒューゴの本心を聞き出そうと目論んでいる。
まあ、十中八九冗談に決まっているが。
迎えに来てくれたヒューゴは、私と示し合わせたように白と黒を基調としたコーディネートだった。
「ヒュー、素敵な格好だね。私達、リンクコーデみたい。仲のいい恋人に見えちゃうかもよ?」
「リンクコーデという言葉は知らないが、俺がルーと仲良くしたいと思っているのは事実だから光栄だ」
フッと笑われて、デートの始まりから私のHPがゴリゴリ削られていくのを感じた。
あれれ?おかしいぞ。
早速ヒューゴに、『結婚の意志があるかのような態度は冗談だよ。ごめん、ごめん』と白状させる作戦のはずが……。
だって、ルイーザと結婚したい素振りなんて今まで見せたこと無かったんだよ?
何より彼は『イケ夢』のヒロインの攻略対象なのだ。
ゲーム内でのヒューゴは独身のフリーで、女性の影なんて全くなかったし、目の前のヒューゴだって思わせぶりな態度を私に取るはずがないのに……。
わざと恋人という言葉を使えば、「俺達はただの幼馴染みだろう。兄妹に見える可能性はあるが」的な返事があると思っていたのに、想定外に甘い答えが返ってきて動揺を隠せないじゃないか。
おかしいよね?
幼馴染みとしてはずっと優しかったけど、なんだかヒューゴの瞳にそれ以上の好意と熱を感じてドキドキしてしまう。
ーーいやいや、気のせいだって!
推しが大好き過ぎて、自分にいいように勘違いして受け取っちゃってるのかも……。
私は前世でも喪女だったし、自意識過剰には気を付けなければ、うん。
ヒューゴはまず植物園に連れてきてくれた。
ルイーザは昔から花が好きだったし、前世の私も庭園に興味を持っていたから、「ヒューゴグッジョブ!!」と叫びたい。
なにしろ前世では空間デザインを専攻し、デザイナーの卵だった私だ。
ここの西洋式の庭と噴水、温室には非常にそそられる。
まぁ、まだ卵の内に死んじゃったみたいだから、経験は浅いんだけどさ。
「凄いなぁ。この温室、計算された空間美だわ。植物の高さと奥行き、光の差し方、絶妙だもん。勉強になるわー」
「思っていた反応と違ったな」
「ん?」
「『黄色いバラ綺麗!!一番好きー』とか言って駆け出すかと思っていたら、ルーは目の付け所が随分変わったな」
やばっ、急に変わり過ぎた?
ヒューゴに不審がられてる?
「黄色いバラももちろん好きだよ?でもここは他にも見所が多くて目移りしちゃうよね。そう思わない?」
誤魔化せたか?
あ、この庭園って歩道のどこに立っても噴水が視界に入るんだ。
「季節ごとに変化を楽しめるように考えられてるし、何度も来たくなるような仕掛けがあるんだよね」
ブツブツ呟く私をヒューゴが見ていることには気付いていなかった。
その後、植物園を出てヒューゴオススメのレストランに向かったら、見回り中のマッチョな騎士団員に出くわしてしまった。
みんな顔馴染みの父の部下達だ。
うーん、いつ見てもなんてゴリマッチョ。
見事すぎるぜゴリマッチョ。
でも私にはマッチョが過ぎるんだよな。
「お嬢!いい天気ですね!」
「お出かけですか、お嬢!」
騎士が声をかけてくれるが、ついヒューゴと見比べてしまう。
やっぱりヒューゴの細マッチョがベストだよ!!
スラっと見えて騎士より格好いい……。
騎士達には適当に手を振っておいた。
レストランはとても美味しかった。
特に鴨が。
ヒューゴとの会話も弾んだ。
「だからね、三百人の敵に一万五千人は勿体無いと思うの」
「確かにその通りだが、それが昔からガルシアのやり方だろう?」
「そうなんだけど、無駄な部分は変えていくべきじゃない?」
思っていたことも相談できた。
今日はなんて有意義なんだ!
と満足していたら。
最後に案内された図書館で思ってもみなかった言葉をヒューゴにかけられてしまった。
「ルー、君は本当にルーなのか?本当のことを教えてくれ」
ありゃ、バレてーら。
当たり前か。
さぁ、なんて答えよう……。




