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天野が最も大切に思うのは自分である

「おい、起きろ、起きろ。ヤバい状況だわ。あの男強すぎたわ」


天野の叫び声が聞こえる。うるせぇ、こっちは寝てるのに....。


「あのくそ男がぁー!!ぶっ殺したるわぁ!」

思わず叫んでしまった。寝てもまだムカムカするって初めてだぜ。


「起きたか!あの嘘つきをぶっ殺しに行くぞ!」


天野も負けじと声を荒げる。


「ああ!」


寝転がった体を起こす。


「げふっ、」


足が何かに引っ張られ、頭から転んでしまった。鼻の下が暖かい。これ絶対鼻血出てるわ。


「足枷ついてるぞ」


ジャラジャラ音を鳴らしながら天野が足を上げる。足枷は細く、すぐ壊れそうな見た目なのだが、


「これ壊せないの?」


足枷なんて生きててはめられることなんてそうないだろう。


「お前起きるまで行動しないつもりだから外してないだけだ。それにこれで俺を止めることはできないことは特怪も知ってるだろうから「逃げるな」って意味の足枷だろな」


なるほどね。脅しね。


「で、多分だけどここは特怪の施設の一室だ。無理に暴れたらここに勤めてる妖怪憑きに集団リンチに遭う」


「どうするだよ」


「相手の出方次第だ」


つまり今はやることなしってことね。


「ま、やることないし呑気に待つか」


難しく考えるより適当に考えた方が人生楽しいからな。寝起きの体をまた寝転がせ床に就く。


「ゴン」鉄扉を叩く音が聞こえた。


「きたぞ〜」


聞いたことのある声がした。


「おいテメェ! この嘘つき野郎! ぶっ殺す!」


鉄扉を開けて入ってきたのはあの、ビンタしてきた男だった。


「覚えとけ、妖怪憑きを信用するな」


よくこんだけ悪い事したくせに説教できるな。逆に天晴れだよ。


「何があったか知らんがお前、俺らを生かしてるってことは....。そういう事か?」


天野が宙に足を上げそして勢いよく振り下ろし立ち上がる。


「で、お前ら今頭回るか?少しばかり質問がしたい」


「待ってました!」


天野がニンマリと笑う。え、何かあるの?



通されたのは壁に大きな鏡が張られている部屋。あ〜、違うな、マジックミラーだ。A○かよ。多分あのマジックミラーの反対で俺を"品定め"してるのだろう。決して気が良いものではねぇな。


「さて、よろしくお願いします」


無機質のな机を挟むように目の前に50前後のおばさんが椅子に腰を下ろす。


「よろしくお願いします」


第一印象は大切だから挨拶はしっかりする。


「貴方は妖怪を憑いているのを国に報告していませんね? 違法なことはご存知ですね?」


おばさんは目の前に書類に目を落とし、尋問を開始する。


「両親が訳ありでね」


「違法は違法です」


「それはごもっともで」


「両親も妖怪憑きということで?」


「はい」


これ以上は語りたくない。おばさんが鉛筆を取りバインダーに挟まれた紙に何やら書き出した。


「すみませんが親については語れません」


怪しまれるがそう答えるしかない。語ってはいけない。何があっても絶対だ。


「の、替わりに俺の持ってる妖怪憑きの場所と憑いてる妖怪全て吐きますよ」


これが俺の最高威力のカード。


「.......数は?」

勿論食いつくよな。特怪のお偉いさんだ、喉から手が出るほどこのカードは欲しいはず。


「俺の安全と引き換えなら全て教えてます」


「....数がわからなければなんとも」


完全に掛かった。


「そもそもその情報の信憑性が低い事。その情報が罠である可能性も捨て切れません」


「じゃ、埼玉県で居酒屋やってる妖怪憑きの野口さんいますよね? あの人に憑いてるのは『垢嘗あかなめ』です」


情報を一つ開示する。この情報は特怪も知ってると思われるため、俺の持つ数多の情報の信憑性が格段に上がる。


「あと、有名なところだと千葉市の市長の佐原さんは『天邪鬼』。そのせいで色々嘘付き市長って、ネットでボロクソ言われてますね」


「誤情報を吐いたらそれ相応の処分が待ってると思いなさい」


この言い草は....、


「信用してくれると?」


「........そうなりますね」


その答えで大満足だ。


「ここに妖怪憑きの名前と住所を、」


A4の紙とシャーペンを手渡される。


「えぇっと、まず....」


安藤知平、熊本県合志市、この後の住所なんだっけ? 年賀状で何回か書いたから知ってるはずなんだけどな....。


「貴方は知人を売ることに心が痛まないんですか?」


シャーペンで頭を突いていると、おばさんから嫌な質問を飛ばしてきた。

「全っ然痛まないですね。これが畜生の行為なのはわかっています。でも今は自分の命が掛かってる、俺は自分が助かればそれでいいと思ってますからね。まぁ、このことはしゃーない犠牲だと思うくらいですよ」

ありのまま思ったことを話す。ここで変に嘘をつく理由はない。


「ここまで来ると扱いやすくて寧ろ好感が持てますね」


「嬉しい限りです」


皮肉に適当に返事する。止めてたシャーペンの先を再び紙に落とす。

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