世の中そう甘くない
天野がテーベル席で呑気にハンバーガーを手に取りジャンクフードにかじりつく。いつ食ってもジャンクフードはもちろんうまい。なんならこの深夜だからうまさブースト掛かっているかもしれない。
「なぁ、なんでハンバーガーなんだ?朝にジャンクフードキツくないか?」
「こんな朝っぱらからやってるのはここだからな。それに妖怪の能力使ってバトる時相当エネルギー使うから」
「なるほどね〜....」
さっきから店員が俺たちのことをコソコソと覗きにくる。絶対不良だと思われてる。そして客は俺と天野の二人だけ。深夜の運搬業の人がいるかもと思っていたがどうやらいなかったようだ。
「なんで24時間営業してるんだろうな。絶対利益でないやろ」
「さぁ知らん。ポテト貰うぞ」
まぁ、24時間やってるってことはちゃんとメリットがあるんだな。それよりポテト取られたんだが。
「こんな時間にリーマンか?」
駐車場についさっき止められたであろう車から降りた男は黒いスーツを羽織っていた。カーライトの明かりのおかげで姿がはっきりと見える。
「さぁ、今から出社だろ」
天野が適当に流すが、そうは思えない。スーツは長時間着ていたからなのか皺だわけだ。
「あぁ〜、ミカ早くそれ食べろ」
天野が何かに気づいたのか焦り出した。男は俺らを見つけると小走りで近づいてきた。天野の友達なのだろうか?
「知り合い?」
「知らん」
「ならどういうこと?」
男が店内に入り、天野の正面に腰を下ろす。
「よいしょっと」
「あのぉ、すみませんがどちら様ですか?」
俺は男の気になり、尋ねてしまう。
「こういうものです」
男は胸ポケットから何かを取りした。出てきたのは金色のエンブレムとプレートがついた革製の手帳だった。そして手帳の下には今一番聞きたくない名前がプレートに刻まれていた。
『特怪』と。
「終わった.....」
心の中でそう呟く。手帳を見せられた犯人の気持ちだ。手の震えが止まらない。
「なんで来たかわかるよな?」
「何が目的だ?」
天野は食べる手を止めず淡々と話す。まるで今起きてることが当たり前かのように。
「そこの学ランの子、火事の時に妖怪憑きになったのかい?」
男が俺のポテトに手を伸ばす。
「...........」
返事の模範解答がわからない。適当なことを言ったら殺される! 何たってこいつは俺ら妖怪憑きを殺す仕事の人だ。
「知らないらしい。妖怪憑きになった自覚がないんだと」
「ふぅん」
男は納得していない。
「で、もう一度聞くけど何が目的だ?」
天野の目の色が変わる。
「わかってるだろ。君たちを殺しに来たんだよ」
男も天野をじっと見つめる。店員が異変を感じたからなのか様子を見に来た。
両者動かず相手の動きを伺う、膠着状態が続く。これじゃあ、まるで動いたら殺し合いが始まるみたいじゃないか。
「あのぉ、お客様大丈夫で--」
店員が話しかけてきた瞬間天野がが男の顔に目掛けて拳を振う。
「え、うぁあ!」
店員が天野らの行動に驚き尻餅をつく。
「流石特怪」
天野が突然放った拳は男に塞がれていた。天野も、男も、それについて驚かない。
「危ないじゃないか」
こうなったら、血が流れるのは防げない。
「ミカ、そこで座って待っとけ」
天野からは焦りを一切感じない。勝つ気でいる。
「頑張れよ」
「余裕だ」
ここまで言われたのだから信用して待とう。
天野と男は外に出た。
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