不機嫌な時は飯を食おう
「落ち着いたか?」
小一時間くらい泣いて泣いて泣きまくった。
「で、こっからどうするかだ」
天野が椅子に腰を下ろす。
「何か夢はあるか?」
夢、夢ねぇ。ガキの頃は博士になりテェってカッケェ夢があったが、今は理科の成績終わってるしなぁ。ふと頭にいい夢が浮かぶ。
「映画監督になりたい! ぽっと出の夢だが結構向いてると思うぞ。この俺の人生を映画にしたらおもろいんじゃないか?」
「ついさっき親失ったし、妖怪憑きになったこと知ってもうネタにできるのか。すげぇなお前」
天野が関心と呆れを両方含んだ顔をする。
「まぁその夢諦めろ。多分まともな人生送れないぞ」
じゃあ無駄に夢語っただけやん。恥ずかしいったらありゃしない。
「これもをみろ」
天野がスマホを投げてきた。画面にはあるサイトが映し出している。
「特怪?何これ?」
「特殊妖怪捜査隊。政府公認の妖怪憑きだけで構成された特殊部隊。ここは主に妖怪憑きの捜査行なってる部署だ。で、ここの奴らに捕まった妖怪憑きはみんな死だ。deathだ」
「....じゃあ敵じゃね?」
「今はな。だがここに入ったら.........。まぁ、わかるよな」
そういうことね。ここに入って合法的に暮らそうぜってことか。
「でもどうやって?書類送ったらはいokって入れてくれるわけじゃないだろ?」
「ここは防衛大学や警察学校で成績いい奴に声をかけて、そいつらに妖怪を取り憑けて雇ってる。だから俺らみたいな天然の妖怪憑きをまず雇うことはない」
「じゃあダメじゃん」
今までの話なんなんだよ。
「だから一作打つ」
天野が自分の太ももをパチンと叩く。落語見てるみたいだ。
「俺らは妖怪憑きをやっつけまくり、その死体を特怪に渡して入れてもらうって作戦だ」
「いや、国の機関だぞ。そんなんで入れるのか?」
「だから渡す怪人は特怪が存在を知らない妖怪憑きだ」
天野はスマホをプロジェクターに繋ぐ。ホワイトボード画像が写し出される。写し出されたのは日本地図と40数人の顔写真。てことはこいつらが妖怪憑きってことだな。
「こいつらは妖怪憑いの『能力』を使って軽犯罪してるゴミどもだ。ちっこい詐欺とか、万引きとか....。まぁ頑張って真っ当に生きてる奴も一割くらいにいるけどな」
なんで万引きしてること赤の他人天野が知ってるんだよ。そいつが自慢してたのか?
「こいつらを政府に届けるってことか?」
「そう!まずは東京からやってくつもりだ」
「おい待て、なんでいい奴も捕まえるんだ? 可哀想だろ。なぁ〜んも悪いことしてないんだぜ。おかしいやろ」
「いや、法律に妖怪憑きは犯罪者って書いてあるだろ。確かに今後一切悪さしないかもだけどよぉ、犯罪者には変わらない」
「でも....」
天野が俺の意見を遮る。
「悪人と犯罪者は違うのはわかってる。お前は良い"犯罪者"は見逃したいんだろ? その考えはこの世界じゃ通用しない。その考えのまま動くと狩られるのはお前だぞ」
天野の目が俺を睨む。天野の意見には納得できない。多分何を言われても納得できないだろう。でも、反対できない。だって俺は力がないのだから。
「うし、今から行くぞ」
「は?まだ気持ちの整理が....」
「朝飯食いながら色々伝える。そこで整理しとけ」
「金持ってきてないぞ」
「俺が奢る」
うほぉい、最高だ。
「よし行くぞ! 何ちんたらしてるんだ!」
ネガティブな気持ちが吹っ飛んだ。飯は人の感情をリセットしてくれる。
「待てミカ」
天野気が変わる前に奢らせなければ。ん、ミカ?
「なんで俺の名前知ってるの?」
確か天野には言ってないはずだ。
「これだ」
俺の財布を取り出す。あぁ、学生証を見たのか。
「火事から救った代で1000円抜いといた」
財布を投げて渡された。
「ゴミ野郎が」
奢りの意味がなくったじゃないか。
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