第71話:魔装具作成1
国王様に魔装具の制作を依頼された私は、クレイン様の工房で、リオンくんと一緒に一本の矢を作っていた。
形成と付与を同時に領域展開し、聖なる魔石を消費して作り上げたアイテム。
それは――。
「できました! これが破魔の矢かもしれません……!」
「いえ、それは聖なる矢です。アンデッド族に効果的なものですね」
晴れやかな笑みを浮かべるリオンくんに、あっさりと否定されてしまう。
オババ様に認められようとも、国王様に期待されようとも、見習い錬金術師の現実はこんなものだ。そんなにアッサリと作れたら、魔装具作りに誰も苦労しないだろう。
でも、ちょっとくらいは夢を見させてほしい。私だって、プレッシャーくらいは人並みに感じているんだから。
「これで聖なる矢と判定されたのは、五本目ですね。一応、それぞれ少しずつ魔力の流れを変えて付与しているんですけど」
「その影響もあって、品質に差が出ていますね。だって、ほらっ! 今のが一番良い聖なる矢でしたよ!」
「……ありがとうございます!」
純粋無垢なリオンくんにおだてられると、拗ねることができない。軽く褒められただけでも、素直に嬉しい。
こうして付与スキルを覚えたばかりの私に、リオンくんが付きっきりで教えてくれていることもあって、なんだかんだで楽しく作業はできていた。
もちろん、師弟関係であるクレイン様も魔装具制作に協力してくれている。破魔の矢の作り方を書物で調べつつ、私の錬金術を見守ってくれていた。
「ミーアには、圧倒的に付与の経験が足りていない。試行錯誤するのもいいが、付与し続けるのも一つの手だな」
「わかりました。じゃあ、思うがままに作ってみます!」
クレイン様に背中を押された私は、本能のままに錬金術を使い続けることにした。
本来であれば、ちゃんと考えて作らなければ、目的のアイテムは作れない。手当たり次第に錬金術を使うなんて、愚の骨頂である。
しかし、今回は素材から作り方まで何もかもわからない伝説級のアイテム、魔装具の制作をしているのだ。
何もせずに考え続けるより、付与の経験を積んだ方が可能性は広がる。まずは魔装具を作成する糸口をつかまなければならなかった。
仮に神聖錬金術を使うにしても、魔装具の作り方がわからないと、体に大きな負担をかけるだけだから。
そんな呑気な気持ちで作業できるのは、少数で工房を運営しているため、温かい雰囲気に包まれている影響だろう。
うまくいかなかったり、失敗したりしても怒る人はいない。心配してくれる人ばかりだった。
「オババが期待する気持ちもわからなくはないが、無理する必要はない。諦めることも選択肢の一つに入れておけ」
「僕も同意見です。すぐにでも魔装具を開発しなければいけないなんて、どの宮廷錬金術師にもできない無茶な依頼ですよ」
二人が味方でいてくれるのは、本当にありがたい。でも、そんな二人に見放された結果、魔装具の制作依頼を受けるようになったという現実もある。
疑うわけじゃないけど、ここはよーく確認しておかないと。
「じゃあ、国王様に依頼失敗の報告をする時、ついてきてくれます?」
「構わない。国王陛下も、理不尽な依頼を出したと、心のどこかで引っかかっているはずだ。諦めたとしても、無下には扱わないと思うぞ」
どうやら本当にちゃんと付き合ってくれるみたいだ。なんだかんだで師弟関係っぽい雰囲気になり、何気に嬉しい。
……正しい師弟関係だったら、助手が魔装具を作ることにはならないと思うが。
「ひとまず挑戦してみます。オババ様の顔を立てた方がいいと思いますし、やってみたい気持ちはありますので」
今回の件に関しては、国を揺るがすほどの非常事態であり、もっと気合いを入れて挑むべきだろう。しかし、見習い錬金術師の私が背負い込むようなものではない。
本来なら、もっと責任を取れる人が挑戦するべきだし、国王様もできたらラッキー程度にしか思っていないはず。
期待してくれているのは、オババ様と工房メンバーの二人くらいだ。
「EXポーションの件がある以上、可能性はゼロではないと思っている。気の済むまでやってみるといい」
「僕もできる限りはお手伝いしますよ」
魔装具が作れなくても当たり前であり、怒られる心配もない。どこまで期待に応えられるかはわからないけど、やれるだけのことはやってみよう。
「わかりました。よろしくお願いします」
魔装具を作るための手がかりを探るべく、私は付与と形成を同時に展開して、破魔の矢の制作を試みるのであった。







