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42.ドラフト四位VSドラフト一位

 帰ってきた友達は見る影もありませんでした。ドラフト一位に対して主人公が選んだ決意をお楽しみ頂ければ幸いです。

 祐輔は腰にバットを差していた。


 そして俺の顔を見るなり走塁技術で一気に間を詰めてくる。俺は否応なしに祐輔の対処に追われてしまった。



 カキーン!! と言う金属音が鳴り響く。



 そして祐輔はニヤリと不気味な笑みを浮かべながら俺に話しかけて来た。どうやらコイツはそれが本当の目的らしい。


 じっくりとそれでいてねっとりとした口調で祐輔は言葉を口にしていった。



「和良クーーーン、お久しぶりやなー?」

「祐輔!! お前、今までどこにいたんだ!?」

「勿論ニュージニアやでえ、それくらい分かるやろ?」

「それにお前、どうしてバットなんて持ってるんだ!? お前は……!!」

「せやなあ、おかしいよな? ワシはピッチャーや、それがどうしてバットなんて持ってると思う? 知りたいか?」



 くっ、雄介はもの凄い力で俺を押し込んでくる。


 そして俺を力付くで突き放すなり、バッティングフォームに入った。コイツ、まさか!! いや、それは先輩との戦いであり得ることとして知ってはいた。


 つまり祐輔は……。



「お前、二刀流か!?」

「せやでーーーー!! ワシはツーウェイの本田祐輔、その打法はアアアアアア!!」

「俺と同じ一本足だと!?」

「ダッシャー!!」



 ガキン!! と言うものすごい音と共に俺はかっ飛ばされてしまった。俺は後方に飛ばされて後方の大木に背中をぶつけた。



 痛え、これは本当に痛い。



 これは野球選手だったら故障者リスト入りするくらい痛い。だが本当に痛いのは背中ではないのだ。


 俺は友達と戦わねばならない状況になったことが最も痛い。


 そして同時に迫られている。俺は本気で祐輔と戦わねばならないのか? いつだったかカワズニーが教えてくれたように大切なものを守るため、手に入れたい未来を勝ち取るために俺は友達にフルスイングをしなくてはいけない時がやって来たのか!?



 俺は混乱によって頭の中がグチャグチャにかき回される感覚を覚えていった。



 だがそれでも戦わねば俺が死ぬ、それも分かっている。


 だから俺は歯を食いしばって決意した。決意したからにはバットを強く握りしめてダッティングフォームを取って待ち構えた。


 無論それは一直線に俺に向かってくる祐輔にだ。



「ほな行くで!! 久しぶりの七色爆弾変化球ドリームブレーキングボム!!」

「本当に容赦ねえな!!」

「当たり前や!! 俺はお前を殺したいんやからなあ!!」



 祐輔の放ってくるボールはピッチャー特有の能力で爆弾化している。二刀流となった祐輔に俺のバットを当てるには距離があってはダメだ。


 だったら爆発しようがこのボールから逃げていては俺のバットは一生コイツには掠りもしない。それが分かっているから俺は覚悟した。



 爆発の中に身を晒しながら俺は虎視眈々と機会を伺うことにした。



 爆発で全身に火傷を負っていく。それでも俺はヒリヒリとする体に鞭を打ちながらジッと堪えて雄介の接近を待った。そしてアイツの声が近づくと待ってましたとばかりにフルスイングを決行した。



「和良いいいいいいいいいい!!」

「一本足打法オーラぶった斬り!!」



 ガキンとバットがぶつかり合う音が聞こえる。勝負の結果は互角が後方の大きくかっ飛ばされてしまった。


 俺は再び大木に背中を殴打して悲鳴のような声を上げて悶えていた。そしてふと周囲の異変に気付き俺は己の状況が如何に最悪かを思い知らされてしまった。



 なんと他の仲間たち全員が祐輔と共に姿を現した因縁の魔導士、アジャー・ワンバックに一掃されているではないか。そのあまりにも圧倒的な力の前にセレソンやハイエニスタまでもが赤子を捻るような感覚でドンドンと倒れていく。


 俺は一気に表情が青ざめてしまい、呟きにも似た声を吐き出しながら目の前に広がる光景を呆然と見てしまった。



 そして、それでも戦闘は続く訳で。



 そんな俺に容赦なく雄介の一本足打法が襲いかかってくる。俺は隙を見せてしまい一瞬だけ対応が遅れるも、何とかバットを短く持って応戦する。


 そして祐輔は再びニヤリとドス黒い笑みを浮かべながら俺に声をかけてきた。



「お疲れやなー、連戦なんやって? 先輩と安藤はんと戦ったんやろ?」

「祐……輔!!」

「ピッチャーかて連投はごっついキツイんや、それも完投なんてした日にはその翌日はとんでもない疲労感が襲って来よる!!」

「知ってるよ!!」

「いーや!! 知らんな、知るわけがないやろ!! お前はそうやって知ったふりをしながら人を見下しとんのや!!」



 祐輔は目を血走らせながら俺を押し込んでまたしてもバッティングフォームを取ってきた。俺は押し込まれたことでバランスを崩してしまい、どう足掻いても祐輔のバットを捌けそうにない。



 悔しさが込み上げる。



 そんな時はいつだって先輩は俺の背中を優しく押してくれたなと、俺は目を閉じて日大最高野球部の練習の日々を思い出していた。


 先輩、俺はまだアンタに恩を返せていない。


 そのためにはアンタを生き返らせないと。


 そして母ちゃん、俺は母ちゃんにも恩を返せていない。俺が母ちゃんに親孝行するためには生き残らないといけないんだ。


 だったらウダウダ言ってないで俺はバットを振るうのみ!!


 俺は負けない理由を全て思い出して出来ることをやろうと心に決めた。そうすると一つの結論に辿り着く。力で勝てないなら技術で、小技で相手を転ばすしか手はない!!



 俺は全身を脱力させて小さく構えを取っていた。バットのヘッドを前に突き出して勢いを殺すバッティングの技術。先輩が最も得意としていた小技だ。


 俺のそんな必死の姿勢に祐輔は表情を歪めながら怒鳴り散らしてきた。



「バントやと!? 男の勝負に水を差すやないか!!」

「バントってのは必死に勝ちを求める男の決意デターミネーションなんだよ!!」



 俺と祐輔のバットが再び衝突を果たす。

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