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04.異世界の勢力図とドラフト会議の意味

 まだまだドラフト会議は続きます.


 タイトル通りになるのはもう少し先です、どうぞお楽しみ下さい。

「私はその異世界人の案に乗るよ」

「カワズニー!! 貴様もこのドラフト会議の存在意義を知っていよう、ならばそんな軽はずみな発言は控えて貰いたいね!!」



 不敵に笑うカワズニーにハイエニスタが食って掛かるように非難を口にした。


 これは俺たちが後に知ることなのだが、このドラフト会議は異世界国家と日本政府との密約から端を発するそうだ。



 ある日、日本と異世界を通じるゲートが開いて、それを皮切りに異世界の各国は日本政府に圧力をかけて来たそうだ。


 異世界の戦力は中堅の一国家だけで地球全土を制圧できるほどだったそうで、日本政府はその対応に苦慮したと言う。


 魔法、これが存在する異世界は一国家の保有戦力が地球のどの国だろうと抗えないのだ。


 そして何よりも人口の差、異世界国家は質と量で地球を凌駕するそうだ。


 それ故に日本政府は俺たちのような落ちこぼれを交渉材料にして異世界国家と交易を結ぶことを決断したのだと言う。


 この会議の開催は既に三回目、前回と前々回では日本は恩赦を餌にして犯罪者を差し出したそうだが、結果は異世界で好き勝手に犯罪を繰り返してしまい失敗に終わったそうだ。



 そこで白羽の矢がったのが高校球児、球児ならば礼儀を重んじると安直な発想で俺たちは生贄に差し出された訳だ。



 ではどうして異世界の国家は一人や二人の日本人で大人しくなるのかと言えば、それは俺たち日本人が異世界に転移すると稀に特殊な力に目覚めるケースがあると言うのだ。


 それは才能の有無によって力の大小が決定するそうで、下手をすると日本人一人につき大量破壊兵器に匹敵するとか。


 とは言えそれらは本当にごく稀のケースらしく、それでも当たれば儲けものと異世界国家は日本政府の申し出を了承した。



 まあ、それは建前なようで実際は食料の援助が異世界国家が大人しくしている最大の理由だそうで。



 莫大な人口を抱える異世界国家からすれば食料問題はとてもシビアらしい。


 そんな異世界の厄災とも称される魔道士は突如として俺に同調してくれた。


 そしてその意見を非難するのは残りの異世界人三人。彼らは国家の威厳を保つために必死になってカワズニーに文句を言い放っていた。



「ジャパポネーゼ如き弱小国家に意見される我らではないんだがね!!」

「セレソンの言う通りだ!! 私は元からこの会議に貴国の参加に賛同していなかったんだ。それでもセレソンと我がジャーマニカ皇帝がどうしてもと言うから飲んでやれば、好き勝手に発言しやがって!!」

「一度参加を認めたのに大国様はグジグジとやかましいねえ、……異世界人。さっきの言葉はアンタらの総意なんだろ?」



 俺がカワズニーに力強く首を振って返すと彼女は再びニヤリと口元を緩ませながら「承知だ」と呟き、視線を三人のお偉いさんに向け直して淡々と語り出した。



 どうやらこの四人の図式が見えてきた。



 カワズニーは弱小国家ながらあの手この手を使って立ち回る政治巧者なのだ。


 対して他の三人は大国と言う立場に胡座を掻くゴリ押しを得意とした所謂いわゆる大企業系の社員のような人間なのだろう。


 それでもその三人に手腕がないと断言する訳ではないが、こう言った類の連中はカワズニーのようなタイプを得意としていない。俺にはそう思えてならなかった。


 俺はカワズニーの問いかけに答えるべく三バカに視線を送って同意を得ると代表して総意を口にした。



「男に二言はないね」

「私は好きだよ、アンタみたいなスッキリした男」



 カワズニーは俺に投げキッスを送ると待ってましたとばかりに他のお偉いさんに対して揺さぶりを開始する。


 そのやりとりを見ていて俺はどの国をドラフトするか決意していた。どうやら三バカも同意見だったようで全員で親指を立てて己の意思を告げていた。


 後はこの四人の舌戦を傍観するのみであり、俺はもはやこの場の男の異世界人には興味が失せてカワズニーしか視線に入らなくなっていた。そのカワズニーはと言えば「任せときな」と揺さぶりを始める前に小さく呟いていた。


「これでこの場の多数決が決したよ? 五対三、ドラフトの権利はこの異世界人にある。大国様は黙って頷いてれば良いんだよ。それとも余裕が無いのかい?」



 この人、凄えな。



 この口調とやり取りに彼女の年齢がどれほどか思わず考えてしまった。



 小柄な美女、と言う見た目だがその見た目だけで判断すればおそらく10代前半、だがそんな年齢でここまで他国に威圧をかけられるのだろうか?



 厄災と称される実力はあるのだろうが、それでも相手は三人全てが40代以上の見た目で大国の重役連中だろうにカワズニーはそんなことを苦にすることなく毅然と対応していくのだ。



「カワズニー!! 貴様はこのドラフト会議の趣旨が理解出来ているのか!?」

「セレソンも苦労してるねえ? アンタはこの中で最もまともだから、そう言った国家の摩擦を気にしちまう。弱小国家の私には想像も付かない苦労だろうよ」

「貴様……、四大国家の我らが歪み合う場合では無いと何故分からん!?」

「分かってるさ、それとこの会議に参加を認めてくれたロマーリオ国王陛下とジャーマニカのクソ皇帝には感謝してるよ。これは本心だ」




 一国の皇帝をクソと断言するのか。




 最初に喧騒を深めたのはカワズニーとロマーリの軍部総司令であるセレソンだった。


 コイツはこのドラフト会議が持つ意味をカワズニーに問いただしていた。


 カワズニーはこの男を買っているようだが、その評価通りと言うか真面目と言うか。外交関係を気にする発言をしてる。


 ジャーマニカのカンとエスパーニュアスのハイエニスタがふんぞり変える中で上から見下す姿勢は見せるも、この男はカワズニーに対して激しい怒りを見せてワナワナと全身を震わせながら戦争の愚かさを語り出すのだ。



 セレソンが言うにはこのドラフト会議はそもそもあまり意味がなかったらしい。


 俺たちのような転移者が異世界で強力な力を持ち得るといっても、やはりその可能性は非常に低い。


 それ故に彼らからしても俺たちはただの厄介者でしかないのだと言う。


 それでもこの四カ国は異世界の中では強国に分類されており、こう言った話し合いの場を設けて国家の摩擦を減らしているそうだ。そして日本政府からスマートに食料を融通させる。



 この会議は日本との繋がりを保つエサであり、ただの茶番だそうだ。



 更に言えばこのドラフト会議は言うなれば異世界の国家間における戦争の代替行為。



 つまりどの国が最初に転移者を競り落とすか、争っている訳だ。



 俺たち四人はただのピエロだと言うのだ。



 そしてカワズニーの属するジャパポネーゼは四大国家の中では最弱、他の国家を大国とするならば中堅国とでも言えば良いか。


 この四カ国を除いた残りの異世界諸国は小規模国家に分類される、彼らの図式は大企業三社が中小企業の一社に圧をかけている。



 そうなる訳だ。



 そして中小企業が大企業に食ってかかる。側から見ればカワズニーは非常に無謀な行動に出ていると言える。


 ここに来てカワズニーはセレソンとのやり取りに飽きたのか腕を組んで大きくため息を吐く。するとそんな彼女に怒りの感情が頂点に達したかの如く今度はジャーマニカのカンが怒気を荒げ始めたのだ。



「カワズニー!! それはジャパポネーゼの総意と受け取って良いのだろうな!? ことと次第によってはこちらにも考えがあるのだがね!?」



 禿頭のデブがドン!! とテーブルを力一杯に叩いてカワズニーを睨み付けている。対するカワズニーはまたしても不敵に笑って「こっちにだって中堅国家の意地があるんだ」と返す。



 場の空気は荒れに荒れていくのだった。

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