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目は口ほどに  作者: とこ
10/28

思い立ったが吉日

授業が始まってから怒涛の毎日で、あっという間に俺が前世を思い出してから一週間がたっていた。

まず朝食の後、城の周りのウォーキングとシャワーを済ませたら出された課題を消費して、昼食をとったら午前中が終わる。ゴードン先生に出された素振り50回に関しては、体力的に50回を連続して行うことができない為、ウォーキングの後25回、昼食の後25回と二回に分けて行っている。


変わったことと言えば、今日のウォーキングで初めて休まずに城の周りを1周できたことと、肌の調子が多少良くなったことくらいだろうか。多少の体力はついたが、勿論体型に大きな変化は見られていない。…すこーし輪郭が細くなったような気も、する?くらいだ。


ちなみに今日は待ちに待った週に一度の休日だ。既にウォーキングも終えて、素振りも半分終わっているからやることはもう殆どない。今はお気に入りのベッドに潜って意味もなくゴロゴロと転がっている。はぁ、ふかふかのベッドもふわふわの毛布も気持ちがいい。何より、こんな太陽の明るい時間からゴロゴロできるのが最高に気持ちいい。今日は一日このままベッドで過ごすのもありかも…なんて考えていたら、俺の部屋のドアをノックする音が聞こえた。


下がってもらっていたメアリに何かあったのだろうか?と返事をしてドアを開ける。


「お兄様、今よろしくて?」


ドアの向こうにいたのは、侍女を連れた、俺の妹アルミラだった。まさかアルミラがいるとは思っていらず一瞬言葉を失ってしまったが、妹からの問いかけに慌てて返事をする。


「ああ、今日は一日休みだから何も用事は無いよ」


一日ゴロゴロするのも魅力的だが、せっかく可愛い妹が訪ねてきてくれたのだ。是非とも一緒に過ごしたい。とりあえず、淑女をいつまでも立たせておくわけには行けないので、アルミラを部屋の中へと通して、ソファーに座るよう促した。部屋の前にいる使用人に声をかけて、メアリを呼び戻しにいってもらう。


「どうしたんだ?俺の部屋にくるなんて。何かあったのか?」

「いえ、とても大事な用、という訳ではないのですが、お兄様が本日お休みだと伺ったもので…ご迷惑でした?」

「そんなことないよ。アルミラが来てくれるだけで俺は嬉しい」


少し不安そうな目でこちらを見るメアリに微笑む。4年も会っていなかったら、実の兄でも距離感を図りかねるのだろう。それでも歩み寄ってきてくれていることに俺は感動している。


後ろでは戻ってきたメアリが紅茶の用意をしてくれていて、アルミラには茶菓子としてシュークリームを出していた。俺は絶賛ダイエット中なので紅茶のみ。勿論無糖。


「よかったですわ!ご迷惑だったらどうしようかと、悩んでおりましたの…でも、実はお兄様にお渡ししたいものがございまして来てしまいましたわ」

「渡したいもの?」

「こちらですわ」


俺は心当たりがなく首をかしげる。アルミラから何かを貰うようなことをした覚えもないし、共通の趣味などもないため全く見当がつかない。

そんな俺の様子を見てアルミラはクスクスと笑いながらついてきた侍女がら箱を受け取り、俺の前に差し出した。アルミラの顔と手元の箱の間で視線を数度行き来させる。


「これは?」

「ふふ、まずは開けてくださいませ!」


言われるがまま、俺は手元の箱を丁寧に開ける。そこに入っているのはガラスの瓶に入った透明な液体。持ち上げてみると中の液体がトロリと揺れた。


「油…?」

「最近ご令嬢の間で人気のヘアオイルですわ」


瓶の中身を見て不思議そうにつぶやいた俺に、アルミラが答えを教えてくれた。


「どうして、これを俺に?」

「最近、お兄様が自分磨きを頑張っていると伺ったものですから、少しでもお力になれればと思いまして」


俺からの問いかけに少し照れながら答えるアルミラが可愛い。前世では妹が欲しかったが、あいにく生涯一人っ子だったため、より一層妹という存在が可愛く見えるのかもしれない。


「このオイルを使ったらアルミラのように綺麗な髪になるのだろうか?」


最初の頃のようにベタつきは無いものの、4年間の不摂生の結果か何だかゴワゴワとしている自分の髪の毛に触れながら問いかける。目の前にいるアルミラの髪は見た目からして触り心地が違うのが分かる程、艶々としてふんわり柔らかそうだ。俺の髪はキューティクルが死んでいる。


「…正直に申し上げますと、一度傷んでしまった髪を美しく戻すのは至難の業です」

「やはりそうだよな…」


少し言いにくそうにしながらも答えてくれたアルミラにやっぱり、と頷く。

髪質改善などを前世で聞いたことはあるが、この世界にそこまでの技術があるとは思えないもんな。

仕方ない、と諦めつつ自分の髪をなでる俺を見て、意を決したようにアルミラが口を開いた。


「…なので、お兄様さえよろしければ、一度髪を切ってしまうのも一つの手だと思いますわ」


この国の貴族間では、男女共に長髪が美徳とされていて、長い髪を美しく手入れすることが富の象徴とされる。逆に、髪が短いということは、長髪を手入れする財力を持たないか、もしくは、髪を伸ばすことも許されない程家内での地位が低く、迫害されていることを表すので基本的に10歳を過ぎた子供で肩より髪が短い人は見ることは無い。だから俺は、ごわごわの髪でも切るという選択肢を持たなかった。


悩んでいる俺にアルミラは続けて言葉を紡いだ。


「お兄様は幸い、学園に入学するまでに後一年程ありますわ。一年もあればある程度髪は伸びるかと思います…とはいっても、髪を切るのは一大決心。慎重に考えていただければと思います。」

「うーん、確かに。…よし、アルミラの言う通りだ、髪を切るよ。今日中に理容師を呼ぼう」

「もう少し悩まなくてよろしいんですか!?」

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