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7犠打目

 白縞がバント失敗しても続く打者たちは次々とバントを決めていく。

 弱小県立高校同士の対戦で注目度は全くだが、今まで誰もみたことのない異常なことが起きている事実はジワジワと世間に広がっていく。

 とある聞いたこともない県立高校がバントばっかりして相手を撹乱しまくっている。

 少ない観客の誰かがそうネットに情報を上げたからだ。

 ただそれほど世間は炸裂する奇策に騒いでもいない。所詮一回戦での弱小同士の潰し合い、バントも決まるさ……その程度のムーブメントしかこの時点では起きてなかった。


 弱小高校の粗い守備を見事なバントで徹底的についた結果、5得点を得た津浜高校は13対8と大差をつけたが、問題は守る側にある。


「どうする、白縞、もう河野は限界だぞ」


 いつもよりだいぶ多いリードをいつもよりだいぶ酷い守備で帳消し状態の河野は5回を越えたところで完全にグロッキー、いつKOされてもおかしくない状態に追い込まれていた。

 それでも津浜高校にはろくな控え投手がいないために即座に交代は不可能。

 一塁の島中は貴重なサウスポーで大きなカーブを投げるが全くストライクが入らないし、白縞は抑えの切り札といえば聞こえがいいが、実際は一回投げるがやっとの体力と球威しかない。

 コールドゲームに持ち込めばイニング数は少なくなるが、点差は思うようには広がらない。このままでは9回試合になる……河野はここで潰れてしまう。1枚看板を失えば、甲子園どころか、次戦勝利すら不可能になる……。


「大久保いけるんじゃないですか?」

 6回表の攻撃中、白縞は川相にそう提案した。

「おーくぼ? いやいや大久保は去年さ、うんうん、肘が痛いのにオレが投げさせて、その後さ……」


「潰れて今は外野手ですけど、最近肘の調子いいみたいで1イニングくらいはいけるって言ってましたよ」


「そういうのオレにも言えよ……一応監督なわけだしさ、キャプテン通さず直接さ。そうか大久保投げれるのか……本来なら今季も背番号1……」


「なら大久保をブルペンにいかせます」

 スタメンで出てる大久保が投球練習するのは攻撃中に限られる。


「よし河野が限界なら大久保投入だ」


「その前に近藤はどうします!?」


「……奴の投球を誰も見てないんだし……いきなり投入するってのもなあ」


「甲子園行きたくないんですか?」


「豪腕河野と菊名コーチが化けさせくれたろう近藤と業師平野がいれば来季以降狙えなくもない」


「あ、僕この夏が最後のチャンスなんで……大久保だめなら近藤投入しかないっすよ、ダメ元で。来年勝っても僕関係ないすから、僕のいない母校が勝っても嬉しさ半分どころか100分の1くらいっすし」


「……オレも嫌に前向きなおまえがいる今夏が最後のチャンスな気がしてきたけど……まあとりあえず出せる手は出し惜しみしないで行くぞ……」

 この回はバント攻撃を取らず、2番平野3番島中はあっさり

アウトになる。


「二死無走者、僕の打順です! バントしますか、それとも強打ですか?」


「おまえにバント無理だろ、打て」


「わっかりました!」

 ここまでいいところがまるでない白縞だが、それなりの大差で無走者のノンプレッシャーな場面だと、島中を差し置いて4番に座る実力が出せる。


「打てるじゃん、あいつ……」

 川相は今日何度白縞に呆れ返ったのだろう。白縞は初球を思い切りぶっ叩くと、打球はものすごい勢いでスタンドに飛び込んでいく。誰がみても文句のない完璧なホームランである。


「こういうホームラン打てるんだよな、卒業するオレと入れ替えりで入ってきたのが白縞だった。オレの一個下がすぐラインで連絡してきたよ、川相先輩の再来が入ってきたって、とにかくバットを振れるって。六大学からスカウトくるオレクラスの打者なんだよ、本来……」


 この打球が打てるのバントに走るよくわからない男、白縞のホームランで点差は7点差に開く。コールドゲームも視野に入る点差だが、不安な投手陣が試合をやすやす終わらせない。

 河野が連続フォアボールを出す、明らかに限界だ。表の攻撃中ブルペンに入ってたライト大久保がマウンドに駆け寄ってくる。

 本来ならエースだったはずの大久保は嫌な流れを断ち切れるか。

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