涼香とミサちゃん
練習試合デビュー戦を無安打、1ファインプレー?で終えた白縞。
当然首脳陣の心象イマイチで次戦のスタメンを勝ち取ることはないはずだったが、スタメンサード予定だった横山が正捕手故障により急遽捕手で出ることが決まったために、棚ぼたでスタメンが決まる。
「8番サード白縞と……」
ベンチ裏の監督室で三軍監督山吉の言うとおり、担当マネージャーがスタメンを書き込もうとしたとき、思わぬ来客が舞い込む。
「ねえ、ミサンゴは? なんで指名打者なの?」
堂々と監督室に殴り込みをかけるのは制服姿の女子高校生。ショートカットで小柄でなんとも愛らしい顔をしている。
「あ……涼香お嬢……」
「山吉監督! ミサンゴをスタメンサードでみたいの〜! 守ってるミサちゃんもみたいの!」
彼女の名は舞岡涼香。ロケッツオーナーの娘である。球場に堂々乗り込んでは現場介入を繰り返す大問題少女。
涼香がミサンゴに必要以上にこだわるのもわけがある。ミサンゴは彼女が去年の夏にアメリカ旅行に行った際に見つけた選手だからだ。
「ミサンゴ!? ミサちゃん! いやあーかわいいじゃん! 絶対連れて帰る!!」
マイナーの試合を観戦したときにたまたま名前が気に入ったとの理由だけで、あっさりミサンゴ獲得が決まってしまう。
フロントも育成選手で安いし、体も大きいから宝くじを買ったつもりで……と許容したが、預かる現場としてはたまったものではない。オーナーの娘肝いりの選手だけに扱いづらいにもほどがあるからだ。
現に今予定をひっくり返され、ミサンゴは下手くそで見るに耐えないサードでスタメン出場が強要され、煽りを食らった白縞は指名打者にまわざるを得ない。
「え! 指名打者でスタメン!?」
高校野球までで指名打者が存在するのは稀にある世界大会のみの日本野球において、白縞は当然指名打者初体験である。
「先輩方……指名打者の心得とかありますか?」
白縞はベンチの先輩方にご指導を願うが、三軍といえばわずかな支配下枠を狙いサバイバルが続くピリピリした環境……後輩にアドバイスを送る余裕のある先輩などいるはずがないと思いきや……意外と優しい先輩も存在する。
「代打を4回やるつもりやな……新人くん……」
まず口を開いたのは育成選手4年目でまさに崖っぷち外野手茂木。守備が苦手なために指名打者経験は豊富。
「代打っすか!?」
「代打といえば準備と集中力の保ち方が問題だろ。対戦する投手をじっくり観察し、打席の直前に一気に集中力を高める……指名打者はそれを4回繰り返す感じだな。ベンチに座ってるときはリラックスしとけ。さもないと集中力続かないからな」
「代打経験もあんまないっすねえ……」
「まあ高校からプロ野球入るのはみなエリートで控えの気持ちはわからんか……」
高校通算打率が.243の白縞がエリートかはさておいて……次に助言を仰ぐのは、
「打席と打席の間、ずっとベンチにおる必要もないんやでえ……。裏でマッサージ受けるのもええし……スマホをいじっとけとは言わんけど……とにかく気分転換できればええ……打席と打席の間30分以上あるんやからなあ」
彼は三軍掟破りの三十路プレイヤーで本来は一軍控えレベルはある上岡。一軍首脳陣に率直な物言いが疎まれて三軍で干されている最中。
「新人の分際でベンチを開けるマネもちょっと……」
白縞が初体験の指名打者の対応法に頭を悩ます中、またとんでもないことが起きる。
「なら私が間を持たせてあげる……」
白縞の肩には体感したことのない柔らかい肌触り。手をかけたのは、舞岡涼香……オーナーの娘。
白縞は振り替えるとかわいい女の子がいて嫌でもはっとする。女慣れしてない白縞は頬を赤らめる。
「私の名前は舞岡涼香……知ってるでしょう? オーナーの娘。他はおっさんばっかで話し相手には一個上はちょうどいいから」
慣れぬ指名打者にオーナー娘の相手も加わり……白縞デビュー二戦目も苦戦必至か?
また出さなくていいキャラか




