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4犠打目


 バント練習に手応えを感じる中、監督の川相は新たな不安要素で頭がいっぱい。

「もし万が一バント野球が上手く行ったとしてトーナメントを進むだろ? 投手足りるか、白縞?」


「河野と島中と僕だけで足りませんか?」


「実質河野一人だろ、お前と島中はショートリリーフのごまかしがせいぜい……他に投手いないのか?」


「3年の大久保なら去年の夏大で監督が無理に使って肘を壊してそれっきりっす」


「……1年で誰かいるか?」


「投手経験者……いたっけ……あーいたいた」


 新入生は平野を含めて7人、そのうち投手経験者は一人だけだった。新入生は即戦力平野以外はまだ体力作り期間でグラウンド外周でトレーニングを積んでいる。


「あの痩せた弱々しいのが、中学時代たった一人の経験者です……」


「あいつかあ……まあこの際ちょっとでもあれば誰でもいいや……あいつの名前は!?」


「近藤です」


「近藤か……あいつを借りるぞ、ゴールデンウィーク期間中……」


「春の地区大会とかぶりますよ」


「いいんだ、どうせ春には間に合わない、そしてオレが指導するわけでもない……この前来た木田さんがいい投手コーチを紹介してくれるらしい。しかも成果払いで前金なしだって……そのコーチに預ければもしかしてもしかするかもよ」


「そのコーチの名前は?……」


「菊名とかいってたな…どっかの球団で2軍コーチをやってたらしい。木田さんとは同郷のよしみといってた」


「菊名……ですか!? 聞いたことありますよ、伝説の……」


「名コーチなのか!?」


「逆です……壊し屋菊名の異名を取ってはず……いじらなくていいフォームをいじって投手を再起不能にすると恐れられてました……」


「まじかよ……それ……。木田さんそんなこといってなかったぞ……でももう誰か一人を連れてくって約束しちまったし」


「どうせ成果なきゃタダです……壊し屋といってもプロの技術が伝授されるのは確かです……案の定失敗に終わっても部員一人くらい犠牲になっても痛くないと割り切れば」


「真面目な顔してずいぶんなこというな、お前も……それなら連れて行くぞ、近藤を。彼が夏のトーナメント救世主になることを祈って……って白縞、お前この前、バント野球が成功すれば、これだけ点が入りますって折れ線グラフをタブレットで示してくれたな」


「まだトーナメントの抽選前で正確な相手がわかりませんが、初戦からバント攻撃を使うと20点……その後山の上に行くたびに得点期待値は減りますが」


「5回戦あたりで得点期待値が増えてたよな」

「ええ、相手投手も疲労がたまる頃ですから。投手前に転がらせば、いくらでもスタミナを奪えますから」


「……で決勝の相手にも5得点できると」


「できますよ、繰り返すとおり、強豪校でも意外とバント処理練習は盲点すっから。神奈川県は特に攻撃型で大雑把なチームが多いっすからね」


「攻撃型多いなら5点以上取られるじゃん」


「それがこの理論の唯一の穴でして」


「……まあいいや、とりあえず近藤が化けるのを願って、近藤が決勝で相手を4失点以内に抑えれば」


「夢の甲子園です!!」


「夢物語を説く教祖と、それをなにも疑わず信じる狂信者みたくなってきたが……まあいいや……それで春の大会はバント攻撃しないんだろ?」


「手を見せるわけにはいかないっすからなね、僕らがどんなボールでもバントできるのは夏の大会まで極秘事項ですよ……」


 といいつつバントの構えをする白縞は相変わらず不格好で転がした打球は虚しくフェアラインを切れていく。

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