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36犠打目

 矢坂の155キロとスライダーはバント野球部にバントすらさせない。一方の近藤は相手のちょっと上にいく投球と出方を探れる洞察力で0を重ねていく。

 6回表一人でも走者が出れば唯一ヒットを放った白縞に回る好打順だが、この回も三者凡退に抑え込まれる。

 ネクストで走者を置いての出番を待ちわびいた白縞は、

「ぬう……」

 となる謎のため息を漏らすがまだまだポジティブでもある。

「矢坂は炎天下なんのそのでスタミナ切れの兆候すらないが、近藤は5回裏の投球を見る限り明らかにコントロールや球威が落ちている……そろそろ失点する確率が高いが、それならそれでいい……逆に勝ち目は出てくる」

 しかも根拠不明の確率論を打ち出す末期症状……津浜旋風は風前の灯火か。


 近藤は白縞の予想通り6回裏にデビュー後の初失点を喫してしまう。

「まさか……狙いを外して投げたのに?……」

 ストレート待ちの打者にスライダーを投げた近藤だが、スタミナ切れで精度が落ち甘く入り二塁打を打たれる。そのランナーをタイムリーヒットで還えされる。近藤の初失点は実にあっさりしたものだった。


「……くそ……3年間無失点の夢が早くも崩れるとは……」

 いつもひょうひょうとしている近藤だが、さすがに目の前で初めてホームベースを踏まれるとショックの色はありありである。

 限界とみた川相は白縞に投手交代を指示、ライトの大久保を呼び寄せ近藤を降板させる。近藤は立ち直りも早いのか、ケロッとしたものでいつもどおりの相手を舐めきった態度に戻っている。


「菊名コーチ……でもこれでいいんすよね? まだ体ができてない今の時期に甲子園なんかいったら3年までには潰れてますから……神奈川最強がこの程度なら僕の卒業までに甲子園なんて軽いですから」


 交代を告げる際に川相と白縞に意思疎通の欠如が産まれる。

「大久保を指差したあとに、指をぐるぐる回したろ? つまりは近藤はライトに残せって意思表示。なのにあいつはライトに河野をいれて近藤を降ろしたぞ?!? いつもながら勝手にやりやがって……近藤の再登板を潰すこったないのに……」

 川相は同点に追いつく都合の未来を考えて絶対的切り札近藤を一時退避させる目論見だった。大久保はその後の攻撃をなんとか抑えて最小失点で切り抜ける。


「なんとか1点で済んでよかったっすね」 

 ベンチに戻ってきた白縞に川相は指示を聞き入れなかったことを問いただす。

「オレは近藤をライトに残せってジェスチャーしたよな?」

「すいませんっす、でも近藤を残さないほうがいいと……自己判断したっす……」


 白縞は7回表の先頭打者のために手短に弁明するだけだ。

 津浜は4番白縞からの攻撃、二塁打に警戒されての?四球と唯一頼れる打者である。

「近藤を試合からも退けさせたのも意味がある。相手は近藤以外は打てると踏んでいる。つまり近藤再登板がなくなった今勝ったとばかりに気が緩む!! 決勝の相撲大を考えれば矢坂のイニング数と球数は少ないほどいい! 残り3イニングなら豊富な投手陣で抑え込めれるって算段もできる……矢坂は7回のマウンドに立たない……はずだ! ってあれえ……?」

 矢坂は続投、7回表のマウンドにもさっそうと登る。


「小山監督……決勝を考えればここで降ろすのが懸命ですよ……」

 白縞はすでに涙目である。

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