34犠打目
近藤に対する世間の評価は今のところ二分されている。
公立に彗星のごとく現れたスーパー一年生、将来性抜群の大器との好評価と小手先で抑えているだけの小さくまとまってるだけという悪評である。
175cm57キロととても野球をやっているように見えない貧弱な体型にくわえて、130キロそこそこで打たせて取るタイプだから悪評が渦巻くのも理解できる。
果たして近藤の正体とは? 甲子園常連校打線がその化けの皮を剥がすのか。
「あいつこっちの狙いをすべてわかってるかってくらいその逆を付いてくる」
先頭打者である4番の迫田はスローカーブで打ち気を逸らされ、次のストレートで40キロ差の緩急差に戸惑い、追い込まれたらボール球を振らせてくるだろうの予想をストレート真っ向勝負で打ち砕かれ見逃し三振に終り、今ベンチで近藤に対する率直な感想を述べている。
「まさかあいつこっちの狙いがわかってるんじゃないのか……なわけねえけどなー」
迫田がそう思いたくなるほど近藤は打者の狙いの逆、逆をついてくる。
「菊名コーチに教えられたことの一つに高校生レベルだと仕草で狙いが分かるっていう秘技がある……この5番のガキは明らかにスローカーブを待っている……前に突っ込まないように重心を後ろ後ろに保っている……ならば……」
5番のガキとは同じスーパー1年生副島、左打者でここまで打率.538 2本塁打と怪童的な活躍をしている。生意気な性格でどうしてチームの誰よりも打っている自分が5番なのかと平気で監督に不満をぶつけれるほどである。
「同じ一年生の得意なスローカーブ打って鼻をあかせたいんだろうが……なら投げてやろうじゃん……」
近藤はあえて副島が狙うスローカーブを初球から投げ込む。近藤のスローカーブはここまで平均91キロだが、副島に投げたそれは80キロと10キロ遅い。
遅いボールを待っていた副島もあまりにも遅すぎてタイミングが狂いバッティングにならない。
「よし……省エネ省エネ……」
同じ一年生を狙い球を投げて打ち取って満足げな近藤だが、前につんのめってなんとか拾い上げた副島の打球は内野の頭を越えていく。外野? 津浜の弱点地帯だ。
「やば当てただけで外野まで……さすが僕と並び称されるスーパー1年生……」
センター山本は足はあるが打球感皆無でどんな打球にも足取りがまごついてるし、レフト緒方はただの消去法レギュラーでライトの大久保は投手出身だけに肩だけあるがその他は特に……のトリオだ。
投手陣がとにかく低めをつきゴロを打たせ外野に飛ばせない努力を重ねてきたゆえの快進撃。外野に飛んだことはほぼ死を意味する。
左中間の打球にレフト緒方とセンター山本が案の定お見合いしてボールは外野を転々としていく。
「3ついける!」
打者走者副島は足も速く走塁も積極的だ。外野が処理にまごつく感に一気に三塁を陥れる。
「1死三塁、まさにチャンスのあとにピンチありの格言どおり……でもここを切り抜けてもピンチのあとにチャンスありにはなりそうもないんだよな」
白縞はあまりの戦力差に軽く絶望もしている。




