5.サバイバルの始まり?②
咄嗟のことで、つい興奮してしまったが、それを静めるために深呼吸をする。
ふぅ〜、落ち着け、俺!
ここが異世界だったとしたら、お前に失う物なんて何もないはずだ!
よしっ。
気を取り直して、次の作業行ってみよ〜っ!
ええと、なになに……
『火の確保は重要。安心して睡眠をとるためにも、動物を寄せつけない火を早めに確保すべし。』
これはさっきと違って、リュックの中にライターが入っていたはずだから、何本か小枝でも集めれば、すぐ出来る。
でも、
「はあ、先に出来ることを全部見ておいたらよかった。」
そんな思いに捉われずにはいられなかった。
さっきとは違い、近辺にあった乾いた枝を手早く集め、ライターで火をつける。
すると、またどこかから俺に対しての視線を感じた。
こんな頻繁に視線をもらってたら、おちおち夜も眠れなくなりそうなんですけど……。
ヘイトを集めるような行動はしてないはずなんだけどな……。
次の行動をする前に、誰かが置いてあった小包でも開けてみようと思い、さっきは避けておいたが、今度は寝床を整えている場所に持ってきた。
こういう中身が何か分からないような物を開けるときには、独特の緊張感を感じるのは俺だけだろうか。
「さあて、鬼が出るか蛇が出るか。」
両目を瞑って、勢いよく包みの紐を解いた。
しばらくの後、片目を少し開けていくと、茶色い物が視界に入った。
とりあえず、危険物でないことだけは確認できた俺は、両目を開き、しっかりと中身のものを見た。
「なんだ〜、パンだったのか。」
突然の見知った食べ物の登場に、俺は思わず安堵の声を漏らした。
で、このパンは食べてもいいんだろうか。
なんか変な物が入っていたりしないだろうか。
匂いを嗅いだところだと、特段変わった匂いはしないから、多分安全だとは思うが、食べるのが躊躇われるのは事実だった。
「はぁー、どーしよこれ?」
また一つ悩みの種が増えた瞬間だった。