41.魔弾着弾
弾を撃ち出した後、その弾は火を纏いつつ、的にした木に向かって飛んでいく。
なんとなくこの後どうなるかが想像つくんだけどな……。そんな不安は見事に的中する。みるみるうちに、木に火は燃え広がった。周辺には木が多くあり、燃え広がりそうだったので、ローリエはすぐに動いていた。
「あー、流石にこれは怒られちゃいそうだなぁ……」
そうぼやきながら、彼はその始末を一瞬で終えていた。瞬きをしている間に、燃えていた木が瞬時に消滅していた。
「……え?」
いやいや、流石に跡形もないなんてことはないだろうと思い、さっきまでその木があった場所をじっくり見たが、灰の一粒さえその場には残っていなかった。
「これは……?」
その場を眺めつつ、ローリエにそう尋ねる。
「空間転移の魔術だよ。さっきの木は僕が人のいないだろう所に飛ばしたよ」
なんかなんでもありだな、ローリエは。本当はなんでも出来るんじゃないのか……。
「へぇ。それって僕も使えるんですか?」
そう尋ねると、ローリエの表情が少し険しいものになった。
「なかなか難しいよ。基本的に自分以外の生物には適用できない仕組みなんだ、この魔術は。できないこともないけど、確実性がないから緊急時以外は使いたくないかな」
「やっぱりすごい魔術なら制限がつくものなんですね」
「んー。転移系統の魔術はね、変な場所に飛ばしてしまうこともあるし、魔物で実験したときにはバラバラになって出てきたこともあった。そこまで確率の高いものでもなさそうなんだけど、万が一のことがあるからね」
いろいろと感慨深そうにローリエはそう呟いた。何か昔にあったのだろうか。実験というのも、なかなかに精神を削るものであろうことは容易に想像できた。
「なるほど。それで、他の魔術とかも弾に込められたりもするんですかね?」
「もちろん。付与は全ての種類でできるよ」
そんな俺の問いにローリエは胸を張ってそう答えた。
「じゃあ、後はやっておくよ。付与をずっと見ているのも楽しいものじゃないだろうしね。帰って、イーリアとでも話してやってくれよ」
その言葉に促されるままに俺はローリエの家へと戻った。ゴーフはそんな俺を見送ってくれていた。
「こっちは出来たら持っていくー」